着眼点の面白さで見せる展覧会である。「子どもと美術」とは誰もが考えそうな企画しやすいテーマだが、意外にこの種の展覧会は少ない。本展はテーマの安易性に陥らず、子どもに対する見方が歴史的にどう変わってきたかを美術作品を通して見せており、美術以外にも得るところが多い。歴史学者がコミッショナーに加わり、おっとりしたマルモッタン美術館らしくない(?)社会性の強い展覧会になった。
16~17世紀は貴族の子どもたちが家系継続の象徴として描かれた。18世紀には病気予防のため母乳育児が奨励され、家の継承者よりも家族の一員として子どもが大切にされ始める。妊婦のおなかの中にいる正常体位の胎児と逆子の胎児を描いた版画は、難産と楽な出産を見分ける素材として助産婦教育に使われた。フランス革命後は、7月革命のときに子ども兵士が登場。1882年、国は12歳以上の男子に軍事教育を始める。産業革命につれて、都市では、生きるために働かなければならない子どもが出てくる。画家たちはこうした子どももちゃんと描いている。
一方、印象派の画家たちは、家族の愛情に囲まれた幸せな子どもたちを描いた。子どもに現れる社会の明暗。今の時代を見ているような錯覚に陥る。(羽)
Musée Marmottan Monet:2 rue Louis-Boilly 16e
www.marmottan.fr 月休。7月3日まで。