5月18日、「警察への嫌悪」に対抗して警察官組合がパリなど全国の主要都市でデモを行った。労働法改正法案に反対するデモが3月頃から頻繁に行われているが、デモする人に対する催涙ガス発射、なぐる、蹴るなど治安部隊の暴行の映像がインターネット上で広がるにつれて、「警察はみんなに嫌われている」というスローガンがデモの際に叫ばれるようになった。昨年のテロ以来、仕事も責任も重くなった上に嫌われるのは納得できないという不満が噴出した形だ。
リベラシオン紙5月18日の表紙は、デモ隊に対峙する共和国治安部隊(CRS)の写真に「Souriez, vous êtes filmés.(はい、笑って! 撮影しますよ)」というタイトルを付け、警察とデモ隊の衝突が頻繁に録画されていることを皮肉っている。3月末にパリの高校生が身柄を拘束された上に警官に腹をなぐられた映像はネット上で2百万回再生されたという。翌日、パリ19区の警察署の窓を若者グループがスコップで叩き割るなどの騒ぎに発展した。問題の警官は逮捕されたが、こうしたデモがらみの警官の暴行事件が約30件、警官の行為を監視する国家警察監察総監(IGPN)に持ち込まれている。こうした警察の行き過ぎ行為に、静かにデモする一般市民にも不安が広がっているようだ。
一方で、デモ隊に混じる「壊し屋(casseur)」 の暴走にも歯止めがかからない。パリ、ナント、レンヌなどでは商店の破壊や車の放火が多数起きた。がれきや金属棒で警官をなぐるといった暴行も横行し、5月半ばの内務省発表によると、3月初め以来、819人が逮捕され、51人が有罪判決に。警官の負傷者は343人だ。17日には内務省が全国で53人をデモ参加禁止措置にした。警察によると、彼らはアナーキスト、zadiste(施設の建設や撤収などに反対して場所を占拠する活動家)、デモに乗じて単に破壊行為をする輩など様々で、中には覆面や催涙弾よけのゴーグルを装着し、凶器をあらかじめ隠しておくなど用意周到な者もいるという。
18日の警察のデモでは、警官の乗ったパトカーが放火されるという事件も起きた。幸いにも警官は無事だったが、たとえ一握りの暴徒や暴力警官のせいだとわかっていても、路上で暴力が横行する状況は異常だというしかない。(し)