「在仏でも日本と同じ防災感覚を」
洪水の防災キャンペーン「L’exercice EU Sequana 2016」で広報を担当した警視庁司令官シドニー・トマさん。
─ なぜキャンペーンを実施したのでしょう。
中世からパリでは周期的に洪水が起こり、最後の大洪水は1910年。現代社会に生きる私たちにはリスクが感じられにくいのですが、実際はいつ起きてもおかしくない状態。今も毎年リスクがあると注意を喚起する必要がありました。
─ キャンペーンの手応えはありましたか。
都会人に自然災害への注意を促すのは難しいこと。しかし11月のテロが起きてからは、市民は危機管理に目を向けるようにもなりました。今回シャン・ド・マルス公園の公開イベントには、千人以上の市民が参加。ネット上の3Dのシミュレーション動画はすぐに10万回再生されました。
─ イタリアやスペインなど外国の協力もありました。
欧州内で防災時の協力体制を取っているので、48時間以内に救助に駆けつけてくれます。チェコやベルギーは、フランスにない巨大なホースを持っているので、今回一緒に使えるよう訓練しました。
─ 増水に対し市民はどんな準備をするべきでしょう。
防災キットの準備は大きな一歩。また交通手段が使えない場合にどうやって会社に行くか、学校が休校になったら子供はどうするかなどのシミュレーションも大事です。今回市民から様々な質問を受けましたが、調査中で答えられないこともありました。国が全てを解決できるわけではないと心得て、各自が意識を高く持つべきです。
─ イル・ド・フランス地域圏以外でも危険はありますか。
もちろんです。とりわけリヨンとトゥール。しかしこのふたつの町は昔からロワール川がよく氾濫してきたので、パリより防災意識は高めです。
─ 在仏の日本人にメッセージをお願いします。
日本は防災管理についてお手本となる国。私は仙台を見学しましたが、住民の意識の高さに感心しました。〈救助の必要がない時は玄関先に黄色いハンカチを掲げる〉など、参考になるアイデアも豊富。両国では自然災害の内容は異なりますが、フランスに住んでいても、日本にいる時と同じ防災感覚を持ち続けてください。