セーヌ川の氾濫を想定した防災キャンペーン「L’exercice EU Sequana 2016」が、3月7日から18日まで開催された。警視庁が87の公共・民間機関と手を結んで、パリと近郊の7カ所で防災訓練を実施、市民に警戒を呼びかけた。
地震も火山もないパリを含むイル・ド・フランス地域圏で、現実的な自然災害といえば洪水。かつてヴァル・ド・マルヌ県が増水に見舞われた際、フランソワ・トリュフォーはカメラ片手に即興撮影をし、後にジャン=リュック・ゴダールが編集をして、短編『水の話』(1957)となった。あるいはバネッサ・パラディの歌『La Seine』が印象的に流れる3Dアニメ『Un monstre à Paris』(2011)では、水に沈む1910年のパリが舞台となっていた。このように実際の洪水が描かれた芸術作品はあるが、21世紀を生きる私たちにとって、その危険はどこか他人事のようなものかもしれない。
とえはいえ、専門家によると1910年冬にパリジャンが経験したような「Crue centennale/世紀の増水」は、いつ再来しても不思議はないという。ならば、備えあれば憂いなし。オヴニーと一緒に増水の危険に備えよう。(瑞)
取材・ 文:林瑞絵