今年1月から地域圏の数が本土では22から13となったが、それに先立って12月6、13日に行われた地域圏議会議員選挙は、第1回投票で国民戦線党(FN)が全国平均27.7%の得票率で6つの地域圏でトップに立った。決戦投票では共和主義者党(LR)・中道連合の右派が40.2%、社会党(PS)ほか左派が32.1%、FNは22.1%に終わった。その結果、右派が本土13のうち7圏を掌握、2010年からアルザスを除く全地域圏を掌握していた左派は大敗が予想されながらも5圏を保持。結果的にはFNは地域圏を1つも獲得できなかったわけだが、議席数は118から358に一挙に3倍に伸ばす快挙だった。
右派傘下の地域圏のうち3つ、左派傘下のうち1つでFNが第2勢力にのし上がったものの、それで地域圏政が目に見えて変化するということはないだろう。しかし、注目すべきは、FNが決選投票で左派808万票に迫る682万票を集めたということだ。世論調査などで予測されていたとはいえ、前回2010年の194万票から今回の682万票という伸びはすさまじい。難民流入問題、テロ事件、高失業率の継続と2015年は大変な年だった。テロ不安、難民流入への漠然とした不安から、フランスを「外敵」から守り、欧州連合よりもフランスの利益を優先すべきというナショナリズムにフランス国民がシフトしているように思える。
こうした国内の雰囲気を受け、そして地域圏議会選や来年の大統領選挙を視野に入れ、左派政権は以前なら右派かFNの政策かと見まがうような右寄りの治安対策を11月から打ち出してきた。テロ事件を受けた非常事態宣言の3ヵ月延長、非常事態に関する1955年法の改正(司法手続きを経ない自宅軟禁・家宅捜索、ウェブ監視などの措置)に加え、テロで有罪となった二重国籍者の仏国籍剥奪といった憲法改正や警察権力を強化するための法改正も検討中だ。
テロ後にスペイン(04年)も英国(05年)も出さなかった非常事態宣言を出し、人権を脅かすまでに治安対策を強化し、「イスラム国」への攻撃に突き進む左派政権。植民地政策の負の遺産を冷静に分析して中東外交を見直すことや、フランス生まれの自国人がテロリストになったことの原因と対策を考えるよりも、目先の脅威を力で押さえることに走る政府。地域圏選挙第1回投票で勝利を収めたFNのルペン党首の写真とともに、「フランスは大丈夫か?」と問いかけるル・ポワン誌(12/10付)のように、この問いを頭に浮かべる人は多いだろう。(し)