このビエンナーレは、11月13日のパリ同時多発テロ事件直前の8日に始まった。事件後、「イスラム国」とアラブ世界の国々、イスラームを混同してこれらの国々の出身者や信徒が嫌がらせを受ける現象が出てきた今、画期的なこの企画を取り上げる意義が、テロ事件以前にも増してあると思う。
アラブ世界研究所所長に就任したジャック・ラングの発案で企画された、マレ地区のギャラリーと4区の区役所、アラブ世界研究所、ヨーロッパ写真美術館(MEP)など、計8カ所で同時に開催される、大がかりなビエンナーレである。会場でもらえる地図を片手に、半日がかりで歩いて回るのも楽しい。
写真家はアラブ諸国出身者にとどまらず、ヨーロッパ人写真家が撮ったアラブ世界も含まれる。MEPは全館をビエンナーレに提供するという協力態勢で、これらの中でも一番多様性に富んでおり、見甲斐がある会場となった。
MEPで展示されている3人の写真家を紹介したい。ヨーロッパ人が撮ったモロッコ人の写真に先入観があるのを感じていたレイラ・アラウィは、ロバート・フランクの 「アメリカ人」に触発され、モロッコ人によるモロッコ人の自然な姿を撮りたいと思った。市場など公共の場所にスタジオを設置し、通りがかりの人たちを説得して撮った。晴れ着を着て自分でポーズを決めた人たちは美しく、自然な威厳がにじみ出ている。
イタリア人とフランス人のカップル、アンドレア&マグダは、シナイ半島にバブルのように建設される観光客向けリゾートホテルやテーマパークを撮った。砂漠の中に突如現れたスフィンクスや城は非現実的で、それに伴う環境破壊も想起させる。
4区区役所の中庭で展示中の、エジプト革命を追ったベルギー人写真家、ポーリーヌ・ブニスの作品も印象に残った。
アラブ世界研究所は、約30人の作品を宗教、性、家族、政治などさまざまなテーマで紹介している。(羽)
1/17迄
▪︎Institut du Monde Arabe
1 rue des Fossés Saint-Bernard
Pl. Mohammed V 5e
▪Maison Européenne de la Photographie (MEP)
5-7 rue de Fourcy 4e
▪Mairie du 4e arrondissement de Paris
2 pl. Baudoyer 4e
▪Cité Internationale des Arts
18 rue de l’Hôtel de Ville 4e
▪Galerie Binôme
19 rue Charlemagne 4e
▪Galerie Photo 12
14 rue des Jardins Saint-Paul 4e
▪Galerie Basia Embiricos
14 rue des Jardins Saint-Paul 4e
▪Grainedephotographe.com
14 quai de Béthune 4e