Le Comte des Nuages – Masanao Abe face au Mont Fuji
備後福山藩主の家に生まれた阿部正直(1891-1966)は、東京帝国大学で物理学をおさめた後、御殿場に雲気流研究所を作り、富士山にかかる雲と気象の研究に没頭する。伯爵の称号を持つ華族で、私財を研究に投入した。「雲の伯爵」という詩的な展覧会名はここから来ている。幼少時に当時輸入されたばかりの映画に目覚め、以来、撮影技術とカメラに興味を抱く。雲を撮影するために写真と映像技術を工夫した独創的な人だった。会場には、阿部正直が撮った雲の写真と使用器具、著作物などが展示されている。写真は科学的でありながら芸術的価値も高い。日本でもほぼ忘れられた阿部の再評価を問う展覧会だ。東京大学が創立以来保存してきた学術文化材を展示する、東京・丸の内の学術文化総合フォーラム「インターメディアテク」の協力による。
Esthétiques de l’Amour
シベリアのアムール川流域とサハリンの住民、北海道に住むアイヌの人々の衣装や装飾品を美的観点から紹介する。鮭や鯉の皮を干してつないだコートやブーツは、非常に丈夫で、寒さから体を守ると同時に、病気や災害の元凶とされる悪い精霊から身を守る道具でもあった。悪い精霊が寄りつかないように熊の顔をデザインした図柄などがコートに描かれている。半抽象の象徴的な模様が美しい。願い事があるときはオブジェを作って精霊に来てもらい、精霊と契約する。精霊が拒否して出て行ってしまったら、オブジェは捨てられる。そうしたオブジェも展示されている。鮭、熊、狐などを森や川の守り神の化身として敬い、畏れ、自然と共存して生きる人たちの生活が見てとれる。(羽)
Musée du Quai Branly (月休) 37 quai Branly 7e.