9月13日まで。ヴィレット公園 Pavillon Paul-Delouvrier内、およびGrande halleの東面。
14h-19h、 月火休 無料。
在仏のスイス人アーティスト、フェリチェ・ヴァリーニ(1952-)は、建物に三次元の絵を作り出す。絵は、通常「描くもの」だが、ヴァリーニの場合、「色を塗って作り出す」というほうが当たっている。建物の遠近を利用して、実際の空間の奥行きとはまったく関係のない幾何学模様を描くのだ。
ヴィレット公園の大ホール横の展示会用パヴィヨンに入ると、まとまりのないさまざまな形の幾何学模様が壁、床、天井、柱、窓、扉と、建物内のすべての場所に飛んでいる。形は整然としておらず、なにかの法則に沿っているわけでもなさそうだ。これは意味があるものなのか? 通常の思考を超えた世界の中で、右往左往しながらある場所に立つと、突然、意味のなかった破片がきれいな幾何学模様にまとまって現れる。これがヴァリーニの絵の作り方だ。パヴィヨンの中には絵の説明も、どこに立って見るべき、というような指示もないのがかえって良い。あちこち移動して、まとまった形が見える場所を自分で捜し当てる楽しみがある。
パヴィヨンの中には、3点の絵がある。一つの絵では、複数の赤い三角形が踊るように脚を伸ばし、頭は天井に届いている。三角の中には水玉が入っている。もう一つの絵では、赤、黄、青、黒の半円形が大きな円とその中に小さな円を描いている。3つめの絵は青い四角が重なり合って浮き上がってくるというものだ。パヴィヨンのガラス窓も塗られている。カテドラルのステンドグラスのように、見る時間帯や季節により作品の見え方は変わる。
パヴィヨンを出たら、地下鉄のPorte de Pantin方向に向かって、大ホールの左側、屋根のあるギャラリーの下を歩いてみよう。朱色の大きな模様が飛んでいる。ここでは、建物の一番端に立つと、分度器のような、半円に近い形が何層も見えてくる。
ヴェルニサージュの日、外の絵に案内してくれたヴァリーニに、パヴィヨン内の2点の絵の赤と外の絵の赤は違う赤だと言うと、「日本には何度も行きました。鳥居はこの色をしているでしょう。鳥居がたくさん続く神社があります」と言う。赤い鳥居がずっと続く京都の伏見稲荷大社を指しているようだ。それが発想の原点とは気がつかなかった。たしかに、ギャラリーの果てまで続く分度器は、形こそ違え、ずっと続く鳥居のようだ。(羽)