欧州連合(EU)のユーロ加盟国の首脳は7月13日、財政危機に陥っているギリシャに対して新たな支援を行うため、交渉を始めることに合意した。ギリシャがユーロを離脱する危機は遠のいたが、ユーロや加盟国間の不信感は尾を引きそうだ。
ギリシャは、ユーロ圏からの財政支援と引き換えに提案された新たな緊縮財政策の導入を頑なに拒み、交渉は難航。国際通貨基金への債務返済期限を迎えても合意に至らず、6月末、債務不履行国となった。銀行窓口は閉鎖され、現金自動引出機の引出額も一日60ユーロに制限。市民生活に大きな影響が出た。
7月5日、ギリシャ政府が実施した国民投票で「EUなどから提案されている(緊縮財政を進める)合意案を受け入れるか」という質問に、投票者の61.2%が「ノー」と回答。欧州に衝撃が走った。仏メディア
も「ユーロ離脱に大きく前進」(6日付ル・フィガロ紙)などと報じ、国民の後ろ盾を得て、ギリシャはユーロと決別の道を歩み始めたかに見えた。
しかし9日、ギリシャ政権は、年金受給年齢の引き上げなどを含む改革案をユーロ加盟国に提出。ユーロ加盟国の首脳は13日朝、新たな支援のための交渉を始めることで合意した。政府のあっという間の「寝返り」に、緊縮財政に反対していた国民から抗議行動も起こったが、ギリシャ議会は16日、これらの法案を可決した。
ギリシャのユーロ離脱は遠のき、仏政府はギリシャとドイツなどの仲介役としての役割を全うしたとアピールしたが、これが最良の道なのかは不透明だ。合意の翌14日、リベラシオン紙は、緊縮財政に反対していたギリシャがユーロ加盟諸国の条件を呑んだことは「国民的敗北」と報じた。ル・フィガロ紙は、莫大な支援を続ける決定をしたユーロ加盟国にとっても「高くつく支援」だと評した。
嵐は去ったが今回の騒動で、ユーロ圏の連帯が揺らいだことも確かだ。フランスの世論調査でも、50%が「ギリシャにユーロを離脱してほしい」と答え「離脱してほしくない」(49%)をわずかに上回った(6日ル・パリジャン紙)。9日のL’OBS誌は「常にギリシャとともに」という見出しで、欧州は運命共同体だと訴えたが、戦後欧州が進めてきた統合プロセスが初めて後退しそうになった事実は、遺恨を残すだろう。(重)