先日、パリ近郊のハイパーの魚売り場の前を通ったら、あっ、アンコウの肝がある! キロ5ユーロもしない! フランス風にポワレするには、ちょっと小さめなのが玉にきずだが、ひと塊を買ったら500グラムあった。
まず表面に筋が出ていたら、肝を手で押さえながら、静かに引き抜く。数年前のレシピでは、クール・ブイヨンで煮てから冷ましてポワレすると書いたけれど、最近はまず蒸すことにしている。ボウルにアン肝をとり、白ワインを振りかけ、軽く塩、コショウする。そのまま30分ほど置いておく。途中で一度引っくり返す。蒸し器を強火にかけ、湯気が立ってきたら、ボウルごとアン肝を入れてフタをする。5分経ったら、肝をこわさないように引っくり返す。もう5分蒸したら蒸し器からとり出す。肝の一部が美しいオレンジ色に変わっているだろう。そのまま冷まします。
そのアン肝がすっかり冷えたら、ソースを作り始める。小鍋にみじんに切ったエシャロットを入れ、白ワインとバルサミコ酢を注ぐ。それが半分ほどに煮詰まったら、ハチミツを加え、混ぜ合わせる。ハチミツのかわりにイチジクのジャムなどを使うと一層おいしくなる。最後に、しょう油少々、塩、コショウで味を調える。
冷めた肝を慎重に取り出し、クッキングペーパーで水気をよくぬぐい、2センチの厚さに切り分け、その切り口に塩、コショウする。フライパンにオリーブ油とバターを半々にとり中 火にかける。それが熱くなったら、アン肝を静かに置く。両面にきれいな焼き色を付けたいものだ。これを皿に盛り付け、そのまわりをソースで飾りたい。柔らかな風味のアン肝と、甘酸っぱいソースの組み合わせが抜群のアントレで、陸のフォアグラも脱帽!
ワインはモンバジヤックなどの甘口の白はどうだろう。(真)
4人分:アンコウの肝500g、白ワイン半カップ、オリーブ油大さじ2杯、バター大さじ2杯、塩、コショウ
ソースの材料:エシャロット2個、白ワイン半カップ、バルサミコ酢大さじ3杯、ハチミツ大さじ1杯、しょう油大さじ1杯、塩、コショウ
●アン肝のおつまみ
上のレシピのごとく蒸し上げたアン肝を、食べやすい大きさに切り分け、レモンを搾りかけ、塩の華とコショウを振りかければ、そのまま極上のおつまみになる。和風にして食べたい時は、白ワインのかわりに酒をふりかけて蒸し、ポン酢を添える。アン肝の缶詰はないけれど、真ダラの肝は、油漬けの缶詰がある。これも手軽でうまいおつまみだ。
●アンコウ lotte (baudroie)
その醜い容ぼうから「海の悪魔 diable de mer」とか「ガマガエル crapaud」などのあだ名を持っているアンコウだが、ほとんどのフランス人はアンコウがどんな魚か知らない。というのも、魚屋に並ぶ時は、頭をとられ、「queue de lotte」と呼ばれる、皮付きの白身の状態になっているからだ。その白身は、締まって繊細な風味、その上小骨がないから、フランス人が大好きな魚の一つだ。中央の骨は簡単に切りはずせるけれど、それも面倒なら魚屋に頼みましょう。
フランス人は、アンコウの身を、ソースで煮たり、ソテーしたり、串焼きにしたり、ローストにしたりと、肉同様に調理することが多い。
●アンコウのロースト
アンコウは4人分として、1キロちょっとのものを買ってくる。アンコウの身に残っている皮と身を覆う薄皮をとる。
オーブンの目盛りを220度に合わせて点火する。アンコウが入る大きさのオーブン皿にオリーブ油を塗る。しっかり塩、コショウしたアンコウを置いて、熱くなったオーブンに入れる。10分経ったらオーブンの目盛りを200度に落とし、オーブン皿の油を、アンコウに刷毛で塗りながら焼き上げる。焼き時間は25分くらいのものだ。付け合わせはピラフ。それにオリーブ油で炒めたマッシュルームと、自家製の、ニンニクの風味をきかせたトマトソースを添えるといい。