エスパス・ジャポンでしばらくの間、タイ料理教室を開いていたペイさんに教わった、タイカレーです。カレーといっても、インドや日本のカレーとは違って、ずっと汁ものに近い。タイ人たちはカレーとは言わず「ゲーン」と呼んでいる。それが、お椀に入って出てくる。ペイさんいわく、タイの人たちも、市販の3種類のゲーンペースト(右欄参照)を利用して、調理時間を短縮しているそうだ。肉用、魚用と使い分けるのではなく、それぞれの好みや気分次第だという。今回は、〈グリーン〉というペーストを使ったが、鶏肉には〈パナン〉も合う。
まずタイ産の香米を、日本のお米と同じ要領で、炊飯器で炊きはじめる。
鶏肉を食べやすい大きさにそぎ切りにする。色どりの赤ピーマンは小さく細く切り分ける。中華の食材店でマックル(コブミカン)の葉が見つかったら、10枚ほど買ってきて、幅1ミリのせん切りにする。とはいっても見つからない時の方が多いから、風味は変わってしまうが、タイ産バジリコを使ってもおいしくできる。
フライパンに油をとり、熱くなったら、〈グリーン〉ペーストを加え、2分ほど炒める。ペーストは水で溶いただけではだめ、炒めることによって、独特の香りが生まれるのだ。ここでココナッツミルク半量を加えて混ぜ合わせ、鶏肉と赤ピーマンを加え、少々強火で火を通したら、残りのココナッツミルクを足す。水、砂糖、塩、マックル(あるいはバジリコ)の葉も加え、5分ほど煮ればでき上がりだ。各人のお椀に盛ったら、マックルの葉を上から散らして食卓に。ボクは最後にライムの搾り汁少々を足す。
炊き上がったごはんに、このカレーをかけては食べていく。ペーストの辛さ、ライムの酸味、砂糖の甘み、ハーブの香りが一つになったまろやかな風味だが、食べ終わった時に、口の中に残る確かな辛さ。ペーストとココナッツミルク、水の量のバランスで、好みの辛さ、まろやかさを見つけるようにしましょう
カレーにはワインは合わない。飲み物は水かビールです。(真)
4人分:鶏の胸肉blanc de poulet 400g、赤ピーマン半個、カレーペースト 大さじ1.5杯、ココナッツミルク200cc、水150cc、マックルの葉(あるいはバジリコ)10枚、砂糖大さじ1.5杯、油、塩
●タイのカレーペースト
ペイさん愛用の既製のカレー(ゲーン)ぺーストです。スパイスのブレンド具合や辛さの度合いで選ぶという。〈グリーン〉は、緑の唐辛子が材料で、少々甘味がある。〈レッド〉には赤い唐辛子 が使われていて極辛だから、あくまでも控え目に。〈パナン〉には乾燥唐辛子が使われていて、スパイシー。どのカレーペーストも冷蔵庫に入れておけば長期間保存できる。
●ココナッツミルク lait de coco
ココナッツミルクの味わいもタイ料理の特徴の一つ。辛さのかどをとり、まろやかな風味を加えてくれる。トム・カー・クンなどのスープにも入ってライムの酸味とみごとに調和する。
●ナムプラー nam pla
タイ料理の塩味と独特のうま味のもとは、ナムプラーという魚醤(しょう)。ベトナムではニュクマムと呼ばれている。サラダや揚げ物などのソースも、このナムプラーを、水やライムの搾り汁で薄めて、砂糖少々を加え、ニンニク、唐辛子、細ネギなどのみじん切りを加えて作る。
●ガランガ galanga
ショウガの親戚だが、辛くなく、鼻にすっと抜けるようなな香りが独特だ。おろしたり、薄く切ったりして、スープやカレーに入れる。
●レモングラス citronnelle
薄く切ってスープに入れたり、鶏肉や牛肉をマリネする時の香り付けにもいい。
●ライム citron vert
タイ料理では黄色いレモンは使わずほとんどライム。スープの酸味などにもこのライムが大活躍。
●タイ産バジリコ basilic doux
ミントやアニスに近い香りがあり、南仏やイタリアのバジリコとは風味が異なる。タイ料理にはタイ産バジリコを。
ガランガ galanga
ライム citron vert
レモングラス citronnelle
タイ産バジリコ basilic doux