市町村区議選挙第1回投票(3/23日)はオランド大統領に「最初のビンタ(大統領自身の言)」を、3月30日の決選投票(棄権率36.3 %)で投票者は「2度目のビンタ」を食らわせた。野党民衆運動連合UMPの「青いツナミ」が票をかっさらい、社会党陣営はツナミに押し流され、人口1万人以上の151市で右派市長572人、左派市長349人と、従来の左右の力関係が逆転した。
そして脅威的進出を見せたのが、マリーヌ・ルペン党首が率いる国民戦線FN。北部の元鉱山地帯パ・ド・カレ県のエナン・ボーモン市でブリオワFN候補が第1回投票で当選 ! 南仏のフレジュス、ベジエでもFN候補が市長になり、マルセイユ(ゴダン市長再選)7区の区長もFN、全国で1300人余のFN 系市町村議員が続出。さらにピレネー寄りのペルピニャン市(アリオFN候補はルペン党首の彼氏で党首補佐)とアヴィニョン市の第1回投票でFN候補が1位になった。アヴィニョン演劇祭の責任者オリヴィエ・ピィ氏は、FN候補が市長になったら演劇祭開催地を他所に移すと表明し波紋を呼んだ。幸いに両市とも僅差でUMP候補が市長になったが、FN が市議会で野党第1党にのし上がる。グルノーブル市が緑の党候補を市長に選んだことが僅かな救い?
FNが 各地で社会党候補を押しのけUMP候補に対抗し、二大政党制を打ち破る。ルペン党首はまず市町村で地元民の信頼を勝ち取り、次は5 月25日の欧州議会議員選挙を狙い、今回の好成績をEU批判、オランド政権批判へと還元させていく。ルペン党首は父親の時代に付けられたレッテル「悪魔の党」を、人当たりのいい若手党員を住民と密に接触させることで、FNのイメージを「非悪魔化する(dédiaboliser)」ことに成功した。
市町村区議選挙の仕組みは、パリなら各区で各党が候補者リストを提示し、 決選で得票率1位の党は総議員数の半数を獲得でき、50%以上ならプラスアルファの議席を得られる。2位以下は残りの議席を得票率に比例して分配する。20区中、人口の多い東部10の区は左派、西部9つの区は右派、唯一2区だけが緑の党が占める。15区から立候補した社会党アンヌ・イダルゴは36.6%、UMP候補63 %。14区のUMPナタリー・コシウスコ=モリゼ46.9 %、社会党53 %で、コシウスコ=モリゼのパリ市長への夢は破れる。
パリ市議会の163議席中、左派92、右派71で、イダルゴがパリ初の女性市長に選ばれる。FN のパリ進出は成らず、イル・ド・フランスでは唯一、人口2万人のマント・ラヴィルにFN市長が誕生。100余の市町村の2/3を右派・中道が獲得、移民・労働者層の多い18の町を共産・左翼が占める。
政権2年で国民の憤懣(まん)を突きつけられたオランド大統領は4月1日、内閣改造に踏み切った。アマチュアリズムと批判されてきたエロー首相の代わりに、専制的でブルドーザー的気質のヴァルス内相(51)を首相に任命、残る任期3年のオランド政権の舵(かじ)取りを委ねる。社会党の中でも右寄りのヴァルス新首相が左派市民とFN指向の庶民にどんな期待を抱かせられるか。(君)