100年に1度の寒波が欧州に訪れると、秋口から取り沙汰されていたが、予想外の暖冬が続いている。とはいえフランスの東部は、少し標高が上がると冬景色。渋滞やスリップ事故を誘発し、主要道路を全面麻痺させてしまう雪は、ドライバーから見ると、あまりうれしくない代物だ。
昨年3月のことだが、当時の深刻な雪害を受け、民衆運動連合(UMP)の一国会議員が、「冬期の冬タイヤ着用の義務化」を提言した。雪道対策は、運転手の慣れうんぬんだけではなく、装備の問題でもあると強調したのだが…のどもと過ぎれば何とやらで、討議はあったが、昨年7月に、この件はどこかへと消え去った。
この議論の際に、興味深かったのが、「冬用タイヤ」という呼称だ。日本ではスタッドレスタイヤの名称でおなじみだが、フランスではスノータイヤと呼ばれているため、「積雪路でなくても冬の気候に適しているから〈冬用タイヤ〉と呼ぶべき」と某オート誌のジャーナリストが表明し、冬タイヤ着用義務を支持した。欧州ではドイツ、ルクセンブルク、イタリアが着用を義務化している。
とはいえ、夏冬でタイヤ2セットでは費用も倍になり、毎回の交換費用もかさむとなれば、ドライバーの理解は得がたい。また冬用タイヤは長くとも年間6カ月しか使用せず、寿命はほぼ4年。これを高いととらえるかどうかは、個人次第に違いないが、私は、ブレーキ感度が上がり事故を未然に防げるとなれば、その価値があると思う。
ただこの案を全国を対象とした時、モンペリエを始めとする1年に1回程度しか雪の降らない町をどうするのかなど、議論の余地は大いにある。とはいえ冬のパリの混乱をこの目で見て体験し、当コラムでも話題にしてきた者としては、ぜひとも前向きに検討してもらいたい案件だ。
フランスの気象庁は、2月以降に積雪を予想している。筆者の冬タイヤは準備万端だが、皆さんはどうだろう?(和)