美しきコルマールの街を歩く。
ワイン街道の中心地として、「アルザス・ワインの首都」とも呼ばれるコルマール。ヴォージュ山脈の豊かな地下湧水(ゆうすい)を引き込んだ水路が旧市街を流れ、「プチット・ヴニーズ」と呼ばれる運河沿いの風景は絵はがきのよう。
15世紀から16世紀に建てられた木骨組みのカラフルな家々は、宮崎駿監督の映画『ハウルの動く城』のモデルとなったと言われる。この美しい建築群とアルザス各地から集められた特産品。おいしいレストランにワイン酒場Winstub。そして、ユニークなお店の看板②にも注目しながら、街歩きを楽しもう。
まずは旧市街の南端サンピエール大通りの小さな橋からスタート。この橋のたもとは、小さな遊覧船の発着場。運河に沿って、窓辺に必ず花が飾られた、色とりどりの家々を眺めて歩く。ほどなく魚屋河岸と呼ばれるエリア。お魚が美味しいと評判のレストラン〈Aux Trois Poissons〉。対岸の屋内市場を通り抜けて、カラフルな屋根が特徴の旧税関へ。前の小さな広場には、気軽なWinstubが軒を連ねる。
その先のサンマルタン教会周辺には、コルマールの地ビールが飲めるカフェや、モダンなアルザス料理レストラン〈Côté Cour〉。教会に向かうRue des Marchandsにはその名の通り、お土産物屋などのお店が集まる。見逃せないのは、Maison Pfister(プフィステル館)。1537年に帽子商人によって建てられたコルマールを象徴する建築物。特徴のある屋根やベランダ、壁面にすき間なく描き込まれた装飾画が圧巻。1階はワインショップになっていて、ワインはもちろん、マールという、ブドウを圧搾した後の果皮や種を発酵させて作る強いアルコールや、アルザスウィスキーもそろう。
そしてハイライト、グリューネヴァルト作『イーゼンハイムの祭壇画』を見ようとウンターリンデン美術館へ。ところが、大規模な改修工事中。これは残念。と思ったら、すぐ近くのドミニカン教会で特別展示中とのこと。ドイツ絵画史上最も重要な作品の一つといわれるこの名画は、十字架のキリストが、何ともリアルで悲惨な姿。見るものをぐっとその世界に引き込む。ドミニカン教会には、有名な『バラの茂みの聖母』もあり、同時に二つの名画を鑑賞できる。
さてそろそろ食事の時間。おいしいと評判のレストランが多いコルマールではどこに決めるか悩むけれど、ウンターリンデン美術館近くの〈Le Théâtre〉がおすすめ。プロ御用達のココット鍋「Staub」が経営。内装は赤レンガとアンティークが印象的で、定番シュークルートやタルトフランベも軽やかで上品。もちろん煮込み料理は絶品。思い出に残る素敵な夜が過ごせる。(高)
Maison Pfister(プフィステル館)
『イーゼンハイムの 祭壇画』(部分)
かわいい看板がたくさん
Le Théâtreのシュークルート