日本の人形劇の影響は大。
人形劇のプロにとって日本は強国のひとつ。『ひょっこりひょうたん島』や『三国志』、『ひらけポンキッキ』など、日本の子供が親しんできたものの多くは人形劇や着ぐるみ(いわば等身大の人形)。そして、なんといっても伝統芸能の文楽がある。ロドリゲスさんによると、文楽は1980年代に西洋の人形劇界を一新したという。
それまで西洋の人形劇といえば、糸操りや手操り(たとえばギニョール)のように、遣い手を見せないことが鉄則だった。ところが、文楽では頭を操る主遣い(おもづかい)は顔を隠さない。このスタイルが人形劇のプロの間に受け入れられるようになってから、人形劇を演じる者たちは「人形をどう見せるか」ではなく、「人形とどう演じるか」にもっぱら関心をはらうようになった。
だが、形だけを真似ることを危惧する見方もある。教務主任エッケルさんも「文楽はもっと総合的で奥深いものだ」という。文楽の人形遣いは「足遣い10年、左遣い10年」といわれる長く厳しい修業をへて一人前となる。今年10月にも文楽の来仏公演がパリであるので、特別に一日を割いてもらってESNAMの学生たちにみっちりと稽古をつけてもらうことになっているそうだ。
世界人形劇フェスティバル
五大陸、27カ国から選りすぐりの人形劇団がやってくるFestival Mondial des Théâtres de Marionnettes。ここでプレミア上演される作品も多いのが「人形劇のカンヌ(映画祭)」とも称される由縁だ。
今年は約100作品が演じられるが、招待カンパニーは〈3・6・30〉で、等身大から2メートル以上の超リアルで存在感ある人形が主人公の2作品を上演。そしてフェスティバルの焦点は、人形劇の伝統を持たないが前衛人形劇で先端をいくオランダ勢。Ulrique Quade、Duda Paivaなどの斬新な演出に陶酔したい。国立人形劇学校の生徒も2作品を発表する。毎日17時から19時は、町の心臓部、デュカル広場に、ギニョール人形劇でもおなじみの道化師プルチネッラが登場。伝統芸から新人形劇研究の先端の作品まで、幼児向けからアダルトと選択肢は広い。プログラムには「全年齢」「6歳以上」「青年・大人」など目安を明記。
– 9月20日〜29日。www.festival-marionnette.com
(予約は既に開始、お早めに!)
– 入場料18€(割引14€)/子供10€(割引9€)
3演目パス45€、6演目パス66€、20演目パス170€。
親子パス(大人1人+4歳未満子供1人)12€。
家族パス(大人2人+12歳未満子供2人)36€。
路上公演は無料。まわってくる帽子に心付けを。
©Philippe Mangen