3月7日にSeuil社から出版された『Mille Cercueils』は、一昨年の震災のとき津波に襲われた岩手県釜石市の、遺体安置所を取材した石井光太氏のルポ『遺体』(新潮社刊)の仏語版。膨大な数の犠牲者が発見される中、検死に動員される医師、葬儀屋、搬送を担った市の職員、多くのボランティアなどが彼らの遺体をどう取り扱ったかという、メディアがこれまで決して報じなかった観点から、気鋭の若手作家がつぶさに被災地を記録した必読の一冊だ。日本では2月に映画化もされた。
悲しみにくれている時間も余裕も与えられぬ状況で、被災者たちは安置所となった体育館で親しい人たちの死と直面していった。死後硬直した体をマッサージして正す、生前のように語りかける、土葬ではなく火葬で埋葬できるように奔走する。各々の分野で生きのこった町の人々が立ち上がって、死者の尊厳を守るために努力を惜しまぬ様には、日本人の死生観や地方での絆の深さがにじみ出ているようにも思える。震災のみならず日本を知る本としてフランス人に勧めてもいいだろう。
同書は日仏の若い有志18名が結成したグループによって共訳された。翻訳料の全額が釜石市教育委員会の基金に寄付されるという。
Kôta Ishii «Mille cercueils-À Kamaishi après le tsunami du 11 mars 2011«, traduit par Groupe Honyakudan
Editions du Seuil, 240p, 19€。