デュマの『料理大事典』が、現代によみがえる。
1869年に書かれた『料理大事典』の原稿は、1870年にデュマの友人の編集者、アルフォンス・ルメールに託された。デュマの死後に刊行されたこの本は、約3000ものレシピが収録されている。これは、名のある作家によって出版されたフランス初の料理本としても貴重なもの。デュマの小説が時代を超えてフランス人を魅了し続けているのと同様、この偉大な料理本も、現代のフランスに息づいている。この「大事典」にインスピレーションを得て誕生したのが、この2冊。
●Petit dictionnaire de cuisine d’Alexandre Duma, avec les recettes de Jean-François Piège
デュマの『料理大事典』に、現代の新たなレシピを60ほど付け加えたもの。食材やレシピの執筆にあたっているのは、星付きの有名シェフで、デュマが好きだというジャン=フランソワ・ピエージュ氏。デュマは、イタリアやスペイン、コーカサス諸国、アフリカといった旅先で、新しい味を発見してはレシピにとり入れたけれど、現代を生きるピエージュ氏は、ベトナム料理のボブンやレバノン風タブレなど、アジアや中東の味も紹介している。たとえば、「WASABI」も出てくる。その説明には、「日本産の植物で、名前は、『山のタチアオイ』の意味である。WASABIは、植物、その根茎、またそれをすりおろしてつくられる非常に強烈な味の調味料も指している。この調味料は、魚にも、豚や鶏肉などの白い肉にも合う」と書かれている。
J’ai lu刊。12€。
●Dico Dumas
オールカラーの豪華なレシピ&料理事典。デュマの記述を元に、フランスの50人のシェフたちによる100点のレシピが写真入りで紹介されている。シェフの中に名を連ねるのは、ミシェル・ブラ、ティエリー・マルクスなど、そうそうたるメンバー。レシピには、それぞれのシェフによるコメントがついている。「デュマのレシピでいただけないのは、ソラマメのさやをむかないこと」、「このレシピで面白いのは、子牛のレバーの大きな塊肉を使っているところ」、「デュマのレシピで好きなのは、バターの扱い方」など、現代のフランス料理を引っぱるシェフたちの目のつけどころを知ることができて、読み飽きない。写真がきれいで、ページをめくりながら味を想像するだけでも楽しい。
Menu Fretin刊。65€。