「イル・ド・フランス産のビスケットがある」と聞き、イヴリーヌ県にある工房を訪れた。農場の一角にある事務所兼アトリエでは、若き創業者のふたりがフル回転で仕事中。事務作業のかたわら、作業衣を毎日身につけて、パティシエールと一緒に自らビスケットづくりに励む。カラフルなキューブ型の箱に収められている4種類のビスケットは、すべて近郊の農家から厳選した原料を元に作った自信作。繊細な香りが特徴のコクリコ(ヒナゲシ)のシロップ入り、甘酸っぱいリンゴが入ったもの、ベーシックで皆に愛されるハチミツ入り、そして、ペパーミント風味のあめが中央に入っている円盤型のビスケット。早速試食してみてびっくり。しっかり焼いてある生地の感じや厚みがほどよいし、4種の風味がそれぞれしっかり生かされているのにも感心。良質なバターを使っているためか、濃厚な味わいでありながら、後味は上品。「たかがビスケット」というなかれ。一度食べてみると、この丸くて小さなお菓子の奥深さに気がつかされる。(さ)
コクリコ風味のボンボンが生まれたのは1850年のこと。〈Les Deux Gourmands〉のコクリコシロップが12%入ったこのビスケットも、長く愛されるイル・ド・フランス名物になるかも。
●商業学校での出会いから
イル・ド・フランス地方産にこだわるのは、ルイ君のフランス縦断の旅が発端になった。「歩いてフランス各地をめぐり、この国の地方の豊かさを発見したんだ。そして、僕らが暮らすイル・ド・フランス地方にある特産品に注目するようになった。この地方には豊かな農地が広がり、素晴らしい農家がある」。そんな農家の血を引いているのが、ルイ君と起業したギヨーム君だ。ヴァル・ドワーズ県の商業学校で出会ったふたりは、すぐに意気投合。イヴリーヌ県クレスピエールにある、ギヨーム君の家族が代々所有する農場の一部を改築し〈Les Deux Gourmands〉という工房を構えた。
そんなふたりの冒険は始まったばかり。「ビスケットの後は、やはりイル・ド・フランス産にこだわりつつ、新しい製品にも挑戦したい」と目を輝かせた。
●縁の下の力持ち
工房できびきびと働いているのは、去年の夏からこのルイ君とギヨーム君の冒険に加わったというパティシエールのマリー・ソフィーさん。
寝かせた生地をめん棒でたたいてある程度平たくした後、それを何度か機械に通して薄い長方形に延ばしていく。型をのせて丸く生地を抜いたら、それをオーブンで15分ほど焼くだけ。簡単そうに見えるこの工程だけれど、仕上がりが均一になるように、マリー・ソフィーさんはしっかり目を光らす。たとえば、型を抜くときは、きれいな丸形ができるように心を配らなければならない。生地の焼き加減も、何度かオーブンを開けては、焼き色を確かめる。ペパーミントのあめを平たい円状に伸ばしてそれをビスケット生地で囲んだり、コクリコのビスケットにケシの実を合わせたりする工夫は、味の組み合わせに強い彼女ならではのアイデアだ。現在も、ビスケットの新しいレシピを考案中。
Feucherolles産。90年代からビオにこだわる農場の卵。
Auffreville-BrasseuilのDeseine一家による伝統的な製粉。
Favières産。ブリーチーズでも有名なRothschid農場の手によるバター。
Oncy-sur-École産。華やかな香りのコクリコのシロップ。花びらは5〜6月に手摘みされる。
Les Deux Gourmandsのビスケット販売店
– Le Village Epicerie Fine:25 r. Bouchardon 10e
– Sept Cinq:54 rue Notre Dame de Lorette 9e
– Chez Monsieur T:85 rue de Levis 17e
6枚入り3.5?、18枚入り8.9€。