反骨精神を貫く姿に感銘した。 『死刑弁護人』

 夏を日本で過ごしました。せっかくなので邦画をいっぱい観ました。ガツンときたのは齋藤潤一監督『死刑弁護人』。安田好弘さんという、誰も引き受けたがらないような死刑事件を引き受ける弁護士の生き様を追った東海テレビ製作のドキュメンタリー。冒頭「マスコミは嫌いだ。マスコミは強者。マスコミは話題を提供するに過ぎない」と語るところから安田弁護士の立ち位置に惹かれ、反骨精神を貫く姿に感銘を受けた。「極悪人像」を作り上げバッシングする社会の風潮、その「極悪人」を弁護する彼もバッシングに遭い、検察は些細(ささい)な事件を無理矢理に安田弁護士にこじつけ逮捕。社会の逆風の中でも彼はひるまず信念を貫く。「事実を出して初めて本当の反省と贖罪(しょくざい)が生まれる」と彼は真実の究明に奔走する。同時に彼を通して見えてくるのは、日本社会の体質であり、その水面下に根づく差別構造(強者と弱者、金持ちと貧乏人…)。善悪の白黒をつけるだけでは本質は変わらないし何も解決しない。安田弁護士は日本では少数派の死刑廃止論者だ。
 一方、今年のメガヒットは、古代ローマの浴場設計者が現代日本の銭湯にタイムスリップして巻き起こす爆笑コメディ、武内英樹監督『テルマエ・ロマエ』。興行収入は50億円突破。こうした今の日本の映画産業を支える邦画メジャーは、大体が漫画かベストセラー小説かTVドラマの映画化でTV局製作・東宝配給というパターン。
 その映画産業とは遠く離れた所で息づく映画群がある。自主製作といってよい低予算、小規模な公開。しかし実はここに真に驚くべき才能が潜んでいると確信。今夏のロカルノ映画祭コンペ部門でワールドプレミアを飾った三宅唱監督『Playback』は、中年に差し掛かった男の深層心理を時空枠を外した自由な表現と役者たちの嘘っぱちじゃない演技でつづるエキサイティングな作品。紙面がなくなったが他にも意表を突く愛しき映画たちが産声を上げている。日本のインディーズ映画からは目が離せない! (吉)