作家のエリーズさんに児童書について語ってもらった。
「猫を飼う作家は良い作家が多いのよ、セリーヌとかね」。茶目っ気いっぱいの笑顔で迎えてくれたのは、売れっ子作家エリーズ・フォントナイユさん。息子さんが拾ってきた猫のマオとサン・マルタン運河近くのアパートに住んでいる。本のアイデアは尽きないようで昨年4冊、今年5冊を刊行とエンジンもますます快調。「アジアびいき」を自認するエリーズさんに極上の中国産白茶をごちそうになりながら、仕事やおすすめ本について語ってもらった。
小さい頃から作家になると決めてました。私の場合、「書くぞ!」と決めたらメザニン(中二階)に閉じこもり、集中してパッと書いてしまう。水道の蛇口をひねればザーッと水が出るように、言葉が流れ出てくるの。でもその前の下調べや準備は入念にしますよ。
幼児向けの絵本からティーンや大人向けの小説、幻想的なSFなど様々なジャンルの本を手がけています。フランスには私のように毎回違う世界観の作品を手がける作家は少ないので、独特の立ち位置かも。私はいつも書くことで大きなオモチャと戯れる子供に戻れるのです。作家ではありませんが、映画監督のティム・バートンには親近感を抱いています。
最新刊の『Le soleil et la mort』は、自殺サイトを見て知り合った子供たちがブルターニュの孤島に集まる物語。ドイツの童話「ハーメルンの笛吹き男」の現代版です。タイトルはラ・ロシュフコーの有名な箴言(しんげん)「太陽も死も直視できない」から。
自殺がテーマとはいえ決して陰鬱な話ではなく、希望を込めた冒険譚(たん)にしたつもり。たまに私は作家として中学や高校に呼ばれ、子供たちと直接対話をする機会があるけれど、出会う子供のほとんどが「周りで自殺した子を知ってる」と言うのには本当に驚きます。現在フランスでは9歳から11歳の子供の自殺すら珍しくありません。思春期に対応する年齢はどんどん下がり、なかには成長の過程で絶望を抱え込んでしまう子も。ひとりパソコンの前にいれば、暗い考えに囚われることもあるでしょう。やはり私は「希望は人との出会いの中にこそある」ということを伝えたい。11歳以上のティーン向けの本ですが、死をどう扱ってよいかわからない大人にも読んでもらってほしいです。
良い本に出会いたければ、お気に入りの本屋を見つけるのが近道。私は3区の「La Marelle」に通ってます。ロシア語でドストエフスキーを読むくらい教養豊かな店主カトリーヌさんが私の水先案内人。児童書コーナーもあるから彼女に推薦を聞くといいわ。そういえば私の作品『Chasseur d’orages』は、カトリーヌさんが、お店の常連でもある映画監督ジュリー・ベルトゥチェリさんにおすすめしたことで、映画化されることにもなったの。
エリーズさん作の児童書
●『Les Poings sur les îles』Elise Fontenaille
Rouergue社。15€。
全国の児童書コーナーで絶賛平積み中。アンリ・ルソーのジャングルを思わせる美しいイメージに溜め息。その昔、スペインから歩いてやってきたペペ(じいちゃん)を、孫目線で温かく描写。「緑の手」を持つ庭仕事の天才ペペが植える種は大きく育つのだ。ル・クレジオ、プレヴェールの世界観が好きな人にもぴったり。
●『La Reine de chat』Rouergue社。6.5€。
故郷ナンシーを離れ、庭もないナントの家に引っ越してきた少女ニナと猫のミナ。ほどなく2匹の子猫も誕生し仲間も増えたが、ニナの弟の猫アレルギーが発覚し、両親は猫の追い出しにかかる。ニナの取った作戦とは? 全ページイラスト入りで小学校低学年以上の女の子は夢中になるはず。エリーズさんの半自伝的小説。
説。========================
【他にも読んでほしいエリーズさん作の児童書】
●『Les poing sur les ?les』(Rouergue社/15€)
全国の児童書コーナーで絶賛平積み中。アンリ・ルソーのジャングルを思わせる美しいイメージに溜め息。その昔、スペインから歩いてやってきたペペ(じいちゃん)を、孫目線で温かく描写。«緑の手»を持つ庭仕事の天才ペペが植える種は大きく育つのだ。ル・クレジオ、プレヴェールの世界観が好きな人にもぴったり。
●『La Reine de chat』(Rouergue社/6,50€)
故郷ナンシーを離れ、庭もないナントの家に引っ越ししてきた少女ニナと猫のミナ。ほどなく二匹の子猫も誕生し仲間も増えたが、ニナの弟の猫アレルギーが発覚し、両親は猫の追い出しにかかる。ニナの取った作戦とは?全ページイラスト入りで小学校低学年以上の女の子は夢中になるはず。エリーズさんの半自伝的小説。
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【エリーズさんが選ぶ児童書三冊】
●『La fameuse invasion de la Sicile par les ours』ディーノ・ブッツァーティ(Gallimard社/5,10€)
「私の心の一冊。実際はタイトルのようにシチリアにクマはいないでしょ?そんな完全なるイマジネーションの飛躍がいい。息子と夢中になって一緒に読んだわ。スティーブンソンの『宝島』もそうだけど、«素晴らしい児童書は世代を超える»の典型。ブッツァーティ本人によるイラストも見事。子持ちの人には絶対プレゼントした方がいい」
●『Katie Pom et le crapaud volant』バンジャマン・ラビエ(Lancosme社/19,50€)
「亡くなってしまったけれどラビエはフランスを代表する絵本作家。キリチーズの笑う牛やサランの塩のクジラのイラストはみんな知ってるでしょう。彼はラ・フォンテーヌ童話の挿絵の仕事が有名ですが、自分で物語も書いた人。この本は田舎の生活がイキイキと描かれています。これ以上フランス人らしい絵本作家はいないかも」
●『La Reine des neiges(雪の女王)』アンデルセン
「一番好きな童話。もちろん愛の物語ですが、根底には悪や悲しみについての哲学が流れてます。主人公の少女は、意地悪な妖精に誘拐された少年を探す旅に出ますね。少女は表現力が豊かなのに、少年の方はちょっと苦手だとか、男女関係の象徴も見てとれますよ。まっさらな雪の世界は童話的な魔法のイメージを美しく喚起」
Grasset-Jeunesse社。8€。