「フランス人は、演劇を観慣れた厳しい観客。途中でヒールをカンカンさせて帰る人も…。あれが怖い。帰るのがステイタスみたい(笑)」。「現代口語演劇」
の第一人者として知られる平田オリザさん。これまでフランスでは『東京ノート』や『別れの唄』などコンスタントに作品を発表。幸い、これまで上演中に
「ヒールをカンカン」させられることもあまりなく、いやそれどころか、劇作家・演出家として揺るぎない地位を確立してきた。その証拠に、パリ近郊イヴリー
ヌ県の演劇フェスティバル〈Odyssées〉は、平田さんに「子供が楽しめる演劇を」と熱いラブコール。
これを受け、日仏混合4人の俳優が織
りなすオリザ版『銀河鉄道の夜 La Nuit du train de la voie
lactée』が完成した。宮沢賢治の「無国籍モダン」は、平田さんの世界観(宇宙観?)と滑らかに響き合う。「フランスでも賢治の翻訳本はあるけどほと
んど知られてない。でもここはサンテグジュペリの国。ちゃんとやれば受けるのではと」。その試みは吉と出た。笛や鈴の音を印象的に使い、時おり日本語も飛
び出す演出に子供たちは目を輝かせる。「想像力に期待して、退屈させないよう工夫しました。箱の中からものが出るというのも子供は好き。でもあまり「子
供」、「大人」は意識せず(戯曲を)書いてますよ」
とはいえ壮大な賢治ワールド、小さな子には難しいのでは…?「たしかにちょっと難しい。でも
最後まで見れば何かを感じ取ってくれるんです。後から聞くと、『人間は一人でもつながっている』とか、『相手のために何かするのが幸せ』とか、相当深いと
ころまで理解してます」。そんな本作をイヴリーヌ県の子供ばかりが享受できてうらやましい!
と思いきや、パリ日本文化会館での上演も決定した。「今回は日本文化の良いところをフランス語でやってます。こちらに住む日本人やハーフのお子さんに観て
ほしいね」。6歳から鑑賞可。(聞き手/林瑞絵)月7日と8日20h、9日17h。一般15€/割引12€/会員9€。