● エシャロットソースで D u v a l の 5 A 。〈Le Coin de Table〉
いつ出かけてもデュヴァルさんのアンドゥイエット(13€)を食べることができる数少ないレストランの一つ。「180度くらいの中温のオーブンでじっくりと焼き上げるのがコツです」とオーナーのソフィーさん。香しく、ぱりぱりの皮の中ではスパイスと臓物がみごとに溶け合っている。アンドゥイエットを語る時、「臓物特有の臭みがある」というけれど、その臭みも、人間の食に対する好奇心とその味へのこだわりから生まれた深み、という気がしてくる。臓物嫌いの人も一度試してほしい。
● Andouillette blanche
はるばるドランシーまで来たので、アンドゥイエット同様に真空パックされ、冷蔵庫で2週間は持つアンドゥイエット・ブランシュandouillette blancheと、きょうの夕食用に血の腸詰めboudin noirを買った。
boudin noirは、皮が破れないようにところどころ楊枝で穴をあけ、皮がかりっとするまで中火で10分ほどバター炒め。中身がはみ出ても気にしない。付け合わせはマッシュポテト。andouillette blancheは、アンドゥイエットの落ちなどを詰め直して火を通したもの。そのまま薄く切って食す。アンドゥイユandouilleよりは臭みが薄くペッパーがよくきいていて、軽い塩味。サンセールの白や、上品なシノンの赤などのワインにぴったりのおつまみ。
●ドランシーの暗い歴史。
ドランシーはパリ北郊外のベッドタウン。見るものなど何もない町だが、「ドランシー」と聞いて暗い表情になるフランス人が多い。ベルトランさんの店がある市場から500メートルくらいのところにCité de la Muetteという団地がある。1940年からユダヤ人、共産党員、レジスタンスの人たちなどがここに強制収容された。そして1942年から44年にかけて、ここからドイツやポーランドの強制収容所に約6万7000人が貨車で送られた。そこから生還してきたのはわずか2000人。ドランシーの収容所で亡くなった人も、詩人のマックス・ジャコブなど数多い。この団地の入り口に、1976年には犠牲者をしのぶ記念碑が、1988年から、この歴史的悲劇の証言ともいうべき貨車1台が置かれている。
◆DrancyのMarché des quatre routes へ行くには、地下鉄5号線のPorte de Pantin駅からバス151番、あるいは地下鉄Bobigny Pablo Picasso駅からバス251番で〈Place du 19 Mars 1962〉下車。151番なら25分、251番なら8分くらい。停留所脇交差点を渡ってすぐ左にある屋内市場に入って右端に〈Au Cochon bleu〉。
*市場は火・金・日の8時から13時まで。