10月16日、パリにて。
9月から全国で燃え上がっている定年制改正反対ストとデモに高校・大学生も加わり教員・労働者とともに10月12日350万人(警察発表110万人)、19日は350万人(120万人)と、9月以来すでに8回の大規模な反対運動(10/20 : 約320校閉鎖)。サルコジ大統領は、23日~11月3日の学校休暇を計算に入れデモ隊の抗議の叫びに耳をふさぐ。22日、上院で定年60歳を62歳に、年金満額取得年齢65歳を67歳に延長する法案他を強行採決、可決されたが、労組・学生・公務員らは政府が同案を撤回するまで闘う構えだ。
しかし9月27日、マルセイユ港で港湾法改正案に反対し火を噴いた港湾労働者のストでタンカー60艘が入港できず、10月13日、全国製油所12のうち11、原油・ガソリン貯蔵所219の大半がストに突入、1/3のガソリンスタンドが底をつく。17日から運送業運転手もストに加わる。ロワシー、オルリー空港の旅客機への給油も確約できず、19日、政府は封鎖中の貯蔵所3カ所に機動隊を導入し強制解除、隣国からの輸入も開始。国鉄・郊外線・地下鉄の間引き・時限ストで通勤客は疲労困憊しているのだが、10月15-16日付CSA世論調査(18日付パリジャン紙)によると、71%(左派88%、右派34%)がこの反対運動を支持しており、68年騒動の再来を恐れる向きも。
高校生までが50年先の定年問題で決起する背景には、今日25歳未満の25%、約100万人が失業中、大卒の就業年齢は平均27歳と厳しい不況が定着。高学歴を目指せば目指すほど定年の日が遠くなる。そして親たちが67歳まで働けばそれだけ彼らの就職口が減り「若者は下積み生活、高齢者は窮乏」と叫び、同案撤回を要求する。89年ドヴァケ大学改正案も高校生が反対し、05年初雇用契約CPE法案も両院可決後に彼らの反対デモで撤回されており、政府にとって高校生ほどこわいものはない。2012年大統領選で彼らの票が政権を交代させかねない。社会党のオブリ書記長もロワイヤル前大統領候補も社会党が政権をとれば定年を60歳に引き戻すと言明している。
今秋の労働組合統一運動の特色は、2大組合CGTのチボー代表とCFDTのシェレク代表が腕を組んだこと。というのは公務員の勤務年数を37.5年から民間の40年に統合した03年フィヨン法案にシェレク代表が同意して以来、2人は口もきかなかった。今回は両代表とも共闘路線を敷き、労組下部組織や極左系組合の山猫ストの統制、一体化に努め、今後の統一行動の作戦を練る。
03年フィヨン法反対ストに公務員の57%が参加したが、今回のストには平均21%(教員は10人に1人)が参加。03年公務員ストを再発させないために労働省は、スト決行者に減給処分を実施。例えば国鉄員の1時間~半日ストは給与の1/50、59分なら1/160の減給になるから連日、時限・波状スト、カタツムリ式のろのろ運転をして闘う。
世界でストとデモが最も多い国フランスだが、今回の抗議運動は定年制改正だけでなくサルコジ体制への社会的憤懣(ふんまん)が爆発したよう。(君)