歌手アルノー

●Arno “Brussld”
 歌手アルノーは、1949年5月、ベルギーの港町オステンドの生まれというから、もうすぐ、61歳。1970年にロックグループの歌手としてデビューしてから40年、『Putain, putain 』、『Bathroom Singer』、『Elle adore le noir』などヒット作を飛ばし、一見アル中っぽい外見と話し振りからは想像できない息の長さだ。本当はタフで、セルフコントロールがきちんとできる人なのだ。フェレの『Ostende』やブレルの『Le Bon Dieu』を歌わせたら、その味わいの深さで、ちょっとかなう人がいない。トム・ウェイツ並みのしゃがれ声、体をねじるようにしながら声を絞り出す舞台姿はジョー・コッカー。
 18枚目のアルバムのヒット曲は、頭のいい女に恋をした男の嘆き『Elle pense quand elle danse』かな。アルノー好みの、遠くから縁日のざわめきが聞こえてくるような音にのった『Mademoiselle』にはブレルの世界が響いている。胸がつまされるのは、もう若くはない娼婦を歌った『Quelqu’un a touché ma femme』。彼の『Les yeux de ma mère』に迫る傑作だ。「貧乏男だって醜い男だって世話しなくてはいけないんだよ」。英語の歌では、ピアノだけの伴奏でゆっくりと歌われるボブ・マーリーの『Get Up, Stand Up』がいい。ビールで酔いつぶれてベッドに横たわったブリュッセル男が「起き上がれ、立ち上がれ」と自分を励ましている。(真)
パリ公演:6月1日Casino de Parisで。


Naïve発行。15€。