日仏離婚の落とし穴。

 フランスでは結婚・事実婚の2組に1組が離婚か離別に終わり、統計によると共同生活の長さは平均5年だそう。2004年に離婚手続が簡略化され、08年の離婚数13万2594件の55%は協議離婚。しかし親が離れ離れになる衝撃と不幸を味わうのは子供で、毎年約14万人が親の離婚・離別を体験している。彼らの90%は母親に引き取られるが、フランスでは両親は平等の親権を有するから、父親が週末やバカンスの半分を実子と過ごすのが一般的。複合家庭での親子関係はさらに複雑になるはずだ。
 人的にも日仏関係が緊密化するなかで日仏国際結婚も増えている。08年にパリの日本大使館に届けられた日仏婚姻数は229件(日本男性と仏女性9件、日本女性と仏男性220件)、離婚数36件。日仏離婚後の問題をめぐり昨年暮れ、リベラシオン紙も日本在住の一人のフランス人男性の例を挙げていたが、日本女性との離婚後、日本にいながら自分の子供に会わせてもらえないフランス人の父親が30人余いるという。
 注意すべきは、親権に関する日仏民法が異なる点だ。フランスでは親権は両親が行使する共同親権であり、「両親は互いに他方の親と子供の関係を尊重しなければならない」とある。日本の民法は離婚後の共同親権は認めず、片親に親権が与えられる単独親権制だ。従って離婚後は元親同士・親族も、子供と離別した親も他人同様となるわけだが、養育費を義務付けられる父親が多いようだ。だが日本では明文化されていないが「子供の健全な成長」という観点から離別した親に「面接交渉権」が認められている。親子関係を維持するのが「親の当然の権利」と考えるフランスの民法とは異なるわけだ。
 フランスでは子供を引き取った親が住所変更などを片親に知らせない場合は「親権行使の侵害」となり懲役6カ月か7500ユーロの罰金、片親が無断で子供を連れ去る行為も犯罪となり1年以下の懲役か1万5千ユーロの罰金刑が科せられる。日本では親が無断で子供を連れ去る行為は犯罪と見なされない点が大きな違いだろう。 
 子供の国際的な連れ去りについては1980年のハーグ条約が規制しており、G8の中でロシアと日本が未調印だ。フランスで離婚した日本女性が子供を日本に連れ去るというケースがあるようだが、父親が緊急に国境警察に連絡すれば出国禁止になりかねない。一方、日本在住の仏男性は日本女性との離婚後、日本の民法・慣習に屈せざるをえない状況に。
 日本では結婚を家と家との結びつきととる結婚観が根強いようだが、フランスでは結婚してもしていなくても頼れるのは自分だけ。日仏男女とその子供の問題は言葉の壁以上に複雑だ。日仏結婚が失敗に終っても、本人が経済的にも自立していれば離婚・離別も人生のつまずきと捉えられ、パートナーを代えることもできよう。だが両親が他人同士になっても、子供にとってパパとママはこの世にただ一人、誰も代わることのできない存在なのだ。(君)