ポランスキー逮捕事件。

 9月26日、チューリッヒ国際映画祭に招待されたロマン・ポランスキー監督(76)を入国時にスイス警察が、32年前の「未成年者への性犯罪」容疑者としてカリフォルニア当局による国際指名手配に従い逮捕、身柄を拘束したことで欧米の文化・映画人が大ショック下に。
 監督のタヴェルニエからアルモドヴァル、スコセッシ、コスタ=ガヴラス他100人余の映画人、カンヌ映画祭事務局、シネマテークまでが釈放請願の署名運動を進め、クシュネール外相はクリントン米国務長官に釈放手配を願い出、フレデリック・ミッテラン文化相は「米国は私たちが愛する寛大な面と怖い面をもつ。今回その怖い面があらわに」と感情むき出しの表明をしたものだから、32年前の犯罪でも有名人を特別扱いすることへの賛否両論が対立。
 1977年3月10日、仏版ヴォーグ誌のため当時43歳のポランスキーがジャック・ニコルソン邸のジャクージで13歳のサマンサ・ジェイマーさん(旧姓。母親は脇役女優)を撮影後、ドラッグの一種Quaaludeを入れたシャンパンを飲ませ、アナルセックスを強要した。母親が「未成年者にドラックを使ってのレイプ・淫行・肛門性交」などを理由にポランスキーを提訴。カリフォルニア州刑法では同意の上でも未成年者との性行為は違法で、米国・スイスとも時効がない(フランスは未成年者15歳未満への性犯罪は時効期限20年)。
 ポランスキーは司法取引で自分の犯行を認め「未成年者性犯罪」容疑だけにしてもらい原告側に損害賠償金を支払う。リットバンド裁判官は被告のチノ拘置所精神科での3カ月拘留を決めたが、性的倒錯者でないと診断され42日後に釈放。が、ドキュメンタリー映画『Wanted and Desired』(マリナ・ゼノヴィッチ監督 08年)が克明に追っているように、捕えた小ネズミを弄ぶネコのように同裁判官は大スター、ポランスキーに執着し、被告弁護士をも翻弄させる。同裁判官に懲役刑50年と脅かされたポランスキーは1978年2月1日判決前日、ロンドンに発ちパリに落ち着く。彼は仏・ポーランド国籍をもち、3人目の妻エマニュエル・セニエとの間に2人の子供がいる。
 現在45歳、子供3人の母親サマンサさんは09年1月、訴追停止を申請した。被告弁護士も故リットバンド裁判官と検事の職業・倫理的過失を指摘し免訴願いを提出したが、判決日に被告が欠席した理由で棄却された。米国側は身柄引渡しの要求期限40日を待たず10月23日スイス当局に申請。ポランスキーがそれに応じるか、スイス法廷に訴えるか30日以内に決めなければならない。
 68年作『ローズマリーの赤ちゃん』で米国では悪魔扱いされたポランスキー。翌年8月に臨月間近の妻シャロン・テートと数人が教祖チャールズ・マンソンのカルト教団に惨殺された。ポランスキーは同事件の「加担者」扱いされマスコミの「リンチ」の対象に。リットバンド裁判官は『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンを追跡した現代版ジャベル刑事を演じたよう。(君)


10月24日付リベラシオン紙の表紙。
写真は1977年当時のポランスキー。