演出されてる子供たちが そこにいて、没頭できない。 『Le Petit Nicolas』

 9月30日公開の『Le Petit Nicolas』は国民的なヒット作になるかな? 題材のプチ・ニコラは、50年代末から愛読されている、サンペのイラスト入りの児童書(ルネ・ゴシニ著)。シリーズもので再販が繰り返されてきた。今まさに愛読中の子供も、もしかして大人も、そしてこれを読んで育った大人も多いだろうから観客層は広そう。当代一のドル箱スター、ヴァレリー・ルメルシエとカッド・メラがニコラの両親を演じている。と、ヒットの要素は揃っている。ニコラ役を射止めたのはマキシム・ゴダール君。8歳のニコラといたずらな仲間たちが、子供ならではの勘違い、思い込み、妄想にのって突っ走る。そしてもちろんママとパパ、担任の先生や教頭先生、女の子、うざい級友や隣の変なオジサンとかもニコラの世界の住人だ。カンヌ映画祭のマーケット上映で早々と観た人から「暖かい気持ちになれるのが今時よい」と聞いていたのでかなり期待して観に行ったのだが…。
 映画はニコラ、つまり子供の視点で描かれている体裁だが、彼らと一緒に、彼らの世界に没頭して映画をたのしむことができなかった。これって、自分の子供時代がもう遙か昔のことだからかとも思ったが、違う。演出されてる子供たちがそこにいるからだ。演出の存在が見えてしまって、冷めた目で映画を観ていた。大人、つまり監督のローラン・ティラーが考える子供の視点で描かれているから無邪気に帰れなかったのだ。担任の先生役のサンドリーヌ・キベルランがよかった。彼女は演出されたのではなく、マジに子供と一緒の気持ちになってた感じがした。今年生誕50周年の『プチ・ニコラ』は、TV用アニメ(画を見たけどサンペの線画ほど可愛くなかった)も待機中。日本でも翻訳本が出ている。(吉)