展覧会の題名から、イングマール・ベルイマンの同名の映画 『叫びとささやき』(1973)を思い出さずにはいられない。映画が女たちのドラマだったように、ここでも主役は女性だ。ベルギー、ラ・ルヴィエール市の「フランス語圏版画センター」が、所蔵作品の中から23人の女性作家のものを選んで構成した。
ルイーズ・ブルジョワ(1911- )とアナ・メンディエタ(1948-85)以外は、50年代~70年代生まれ。60年代、女性作家たちはフェミニストであることを作品で主張して、社会的な認知を闘い取ろうとしたが、この世代の作家たちはもっと内向的で個人的だ。社会への違和感や抵抗は控えめに表現されており、一皮むかないと見えてこない。
アメリカ人、キキ・スミスの写真は、下半身に仕事着をつけ、上半身がヌードの自画像だ。重く垂れた42歳の乳房。頭は石膏で覆われ、目はつぶれている。何か言いたげな半開きの口は石膏で固められ、無言の叫びが存在感のある手や胸を通して伝わってくる。
ベルギー人のロランス・デルヴォーは、腎臓、乳房、腸などの臓器を思わせる形を吹きガラスで作り、色付きの液体を入れた彫刻「人間の液体 Fluides humains」を展示している。透明感のある作品が自分の体内の臓器のように思えてくる。こんなに美しいものが自分の中にあるなんて、生きているって素晴らしいなぁと感じさせる作品だ。
フランス人のフランソワーズ・ペトロヴィッチの「人形 Poupée」は、小動物を連れた少女を表した18枚のデッサンである。少女の顔や体の一部が黒く、あざのようでもあり、ぶたれたようでもある。決して幸せそうには見えない。幼児虐待? 子供のころの不安? 壁一面の少女たちのうつろな目が見る人たちに重くのしかかってくる。
ベルギー人のシルヴィー・カノンヌは、森での少女と動物の出会いをシンプルなデッサンにした。少女には顔がない。動物の頭を抱えた少女。鹿の角を引きずって歩く少女。初潮や思春期の性の芽生え、太古の女性原理を象徴しているなど、いろいろな解釈ができる。グリム童話の深層心理の世界にも通じていて、想像力をかきたてられる。(羽)
写真:Kiki SMITH Autoportrait, 2007 Photographie Collection privée
Centre Wallonie-Bruxelles : 127-129 rue Saint-Martin 4e
9月6日迄 11h-19h。土日休。