この作品は、公開から既に25週も経っているので、上映館も1館だったりするのですが、口コミで超ロングランになっているのです。ジャン=ポール・ジョー監督『Nos enfants nous accuseront 未来の食卓』は、ユネスコの環境汚染問題会議の出席者に「ガンや糖尿病、不妊症にかかっている人が身近にいる方は挙手して下さい」と言うところから始まる。大勢の人が手を挙げる。「今の子供たちは、近代史において初めて、親の世代より健康が劣るのです」…。 我々はなんという過ちを犯したのか! それは今からでも修復可能なのだろうか? と、この映画は問いかける。
日本では、有吉佐和子著『複合汚染』(1975)のころから既に、農薬や化学肥料がもたらす災禍についての問題意識をもっていたと思うが、農業大国フランスでは、農民も関連企業も各々の思惑から問題にふたをしてきた傾向があるのではないか? 映画は、アヴィニョンの北西に位置するバルジャック村にカメラを移す。この村の小学校の給食はすべてオーガニック(有機栽培)食材で賄われている。近郊の農村では、既に有機栽培に切り替えた農家、未だ化学薬品を使い続けている農家がある。双方に事情や言い分はある。が、農薬から身を守るため完全武装して農薬を撒く人の姿を見せられた後は、背筋が寒くなるような人々の証言を聞いた後は、もう絶対にその辺のスーパーで売ってる食品など口にしたくなくなっている。高くても遠くてもBioの食品を買いに行こうと肝に銘じている。これは優れた啓蒙(けいもう)映画なのだ。
バルジャック村の子供たちが、給食を食べながらおしゃべりしたり、校庭の菜園で野菜を作っている姿を見ていたら涙が出てきた。今からでも遅くはないと思いたい。過ちを正そうとする人間の姿に感動した。(吉)
