「セーヌ川、そしてその歴史」とピエールさんは言う。
ルーアンから世界に新鋭な音楽を発信しているラジオ局HDRのDJピエールさんは、港町フェカン出身で、ルーアンへは17歳の時に越してきたという生粋のノルマン。早速電話で待ち合わせたPlace du vieux marchéのカフェへ。「この広場での待ち合わせには気が引けたんだ。観光客向けの雰囲気だからね」とピエールさん。
まずはrue St nicolasという、ルーアンで一番古いとされる通りを中心とした旧市街へ。その街並みからは、ジャンヌ・ダルクが生きていた当時の音が聞こえてきそう。「la ville des 100 cloches 100の鐘を持つ街」と呼ばれるルーアンには本当に教会が多い。普通、街の目印となる教会だが、多すぎて逆に方向感覚が狂ってしまう。rue des chanoines(教会参事員通り)と呼ばれる大聖堂脇にある小道は、一見に値する。
「ルーアンの魅力はセーヌ川、そしてその歴史」とピエールさん。セーヌに惹かれ市民は河岸に集う。5年ごとの〈Armada〉には、世界中から大型帆船がやってきてセーヌ河岸にいかりを下ろす。昨年も数百万人の見学者を記録。約11万人の人口を持つルーアンは「セーヌ川が境で、右岸はブルジョワ街、左岸は庶民街なんだ」
パリ同様、ルーアンでも始まったばかりの公共のレンタル自転車cy’clicに乗って、ジャンヌ・ダルクの塔へ。投獄されていた名残りは色あせたものの、歴史の重みは充分感じられる。そしてセーヌ岸辺をサイクリング。10年前くらいから河岸が整備されて、ルーアンの人々の動きがダイナミックになったという。
翌朝は、Place St marcのにぎやかなマルシェに出かけ、名物のチーズ〈Neufchâtel〉をおみやげ用に購入。広場を囲むカフェでは、ビールをチェイサーにカルバドスを飲む人々! 脱帽。
その後はピエールさんと、おすすめのレストラン〈l’espiguette〉で昼ごはん。メニューにはノルマンディー風と呼ばれるクリームソースの料理がほとんどない。前菜には、洋梨、鴨の胸肉のくん製、パルメザン、そして春一番の野菜がふんだんに入ったサラダ(9.7€)。メインは、コンフィ・ド・カナールを敷いてマッシュポテトで覆ったアシ・パルマンチエ(8.7€)。ワインは南仏産フォジェール(19€)。「本格的なtrou normandでしめよう」とピエールさんがご主人に特注してくれた。グラスにスプーン一杯ほどのリンゴのシャーベット、そこにカルバドスが注がれている。クリームソースで胃がもたれていたとしても、が然すっきりのおいしさ。
アシ・パルマンチエ
リンゴのシャーベット
(麻)
rue des chanoines
ジャンヌ・ダルクの塔
セーヌ河岸
家族連れの散歩姿が目立つ。
Place St marcのにぎやかなマルシェ