大恐慌ウィルスが世界中に蔓延し、金融・産業界総崩れで失業者が増大するなかで3月19日、全国で約300万人が「首切り反対・賃上げ」闘争デモ。市民の怒りと不安などどこ吹く風、年頭に公的援助17億€を受けたクレディ・リオネ銀行がデモの前日、ブトン頭取他、重役3人がボーナスの代わりに計770万€にのぼるストックオプション*売却を発表したものだから、サルコジ大統領も怒りを爆発。4人は同売却を思いとどまり、退職後の年金年100万€(給与の70%)を皮算用。
米国でも公的援助1700億ドルを受け政府管理下にあるAIG保険会社が、平然と総額1億6500万ドルのボーナスを幹部20人に支払ったことでオバマ大統領も激怒。3月19日、米下院議会はこのボーナスに90%課税する法案を可決している。
石油大手トタルは550人削減しながらドマルジュリ社長に150万€のボーナス(昨年収益140億€)。自動車下請け会社ヴァレオは昨年2億€以上損失し1600人解雇。国の援助金1900万€を受けながら、戦略転換のため解任されたモラン社長は給与2年分、320万€のゴールデンパラシュート**を獲得。公的援助80億€を受けた仏自動車業界や210億€が投入された金融業界では、この種の話題が尽きない。
ちなみにルノー・日産ゴーン社長の07年度報酬総額(給与+ボーナス+ストックオプション)は約600万€というから庶民の計算機には入りきれない(さすがに今年のストックオプション売却は諦めたが)。07年に民間企業協会Afepと仏企業運動団体Medefとが経営者にモラルと自己規制を求める規制書を作成したが、その効用性についてはMedefパレゾ会長も保証できない。
与党でも経営陣の報酬上限規制を法制化すべきだという意見も出ている中、3月31日、政府は公的援助を得た銀行6行と自動車製造会社にだけ適用する政府命令デクレを発表した。2010年まではそれらの経営陣には無料自社株やストックオプションの売買を禁止。それ以降は景気回復後、幹部へのボーナスは許すが、リストラする企業幹部には禁止するなどだが、対象となる企業はほんの一部にすぎない。
経営陣の暴利がやり玉にあがったのと同時に浮かび上がったのが、脱税金やドラッグマネーも国外から入金できるスイスやモナコ、ノルマンディ沖のジャージー島、香港、マカオなど50余のオフショアパラダイス「オフパラ」。世界の銀行4千行他、大企業・富豪たちが利用し、脱税総額5~10兆ドル(仏200億€)のうちの1/3をスイスが吸い上げる。3月31日、リヒテンシュタインでアディダスとミシュラン、トタル3社のオフショア口座が発覚したばかり。
4月2日、ロンドンでの金融サミットG20でオフパラ対策が課題の一つに。世界経済のガン、オフパラに今後どこまで斬り込めるか。(君)
*自社株が低額時に購入予約権を得て、株価が上がった時に権利行使し購入し、さらに上がった時に売却し利益を取得。
**被買収時に解任された旧経営陣が請求する巨額の退職金。