子供のような好奇心、ユーモア。 Alexander Calder “Les annees parisiennes, 1926-1933”

 どこも不況で、暗い顔が多い今の時期、ここに来れば心が晴れ晴れして、愉快な気分になれる。落ち込んでいる人にもおすすめだ。
 アメリカのペンシルヴァニア州で、彫刻家の父と画家の母の間に生まれたアレクサンダー・カルダー(1898-1976)は、8歳の時に親から仕事場を与えられ、廃物を使って玩具を作り始めた。大学で機械工学を学んだ後、芸術家になることを決意し、美術を学び、27歳の時にパリに来た。
 この展覧会では、在パリ時代の6年間の作品群を紹介している。パリは、カルダーが彫刻界の新鋭として頭角を現した重要な場所である。
 一番の目玉は『サーカス』だ。100体以上の動物や人物をリサイクル素材や針金で作り、カルダー自身が裏方になって動かした人形サーカスは、当時、パリの芸術界で大評判になった。技師としての力が発揮された作品だ。会場に陳列された動物や人物が、晩年に撮影された映画の中で生き生きと動いているのを是非見てほしい。動物が落としたうんこ(実は落花生)をカルダーがちりとりで掃除していくシーンは、茶目っ気たっぷりでおかしい。空中ブランコ乗りが飛んだ瞬間、しっかり別のブランコ乗りにつかまるシーンは、いったいどうやって作ったのかと思うほどの巧妙さだ。映画の終わり、カルダーは、森の熊さんのようにスタスタと森の中に消えていく。
 老いても、子供のような好奇心とユーモアの持ち主だった。彼の作品がすがすがしく映るのは、屈折していないシンプルなわかりやすさが稀な時代になっているからかもしれない。
 けれども、子供の遊びのようでありながら、そうでないことは明らかだ。鳥獣戯画のように墨と筆で描いた動物や、針金だけで作った当時の著名人や芸術家の像から、カルダーのデッサン力の確かさがわかる。
 モンドリアンのアトリエを訪れ、その幾何学抽象絵画にショックを受けたカルダーは、「これが動いていたら、どんなに面白いだろう」と思い、そこから、動く彫刻「モビール」が生まれていった。思いつきそうでいて誰も思いつかない発想だった。
 会場は二つに分かれていて、常設展会場の一部に続いている。こちらもお見逃しなく。(羽)

ポンピドゥ・センター:7月20迄(火休)。 


Cirque Calder, 1926-1931
Photo © Whitney Museum of American Art.
Alexander Calder © 2008 Calder Foundation,
New York/Artists Rights Society (ARS), New York