年初めにあまり景気の良くない話だが、フランス人の足がレストランやカフェから遠のいているという。鉄鋼・自動車産業・建設業界、不動産業、サービス業とドミノ式に不景気風が吹き荒れ、失業率も2008年の7.3%から2009年は8.2%に上昇するなかで、そのとばっちりを受けているのがカフェやレストラン、ホテルだ。
統計によると、1960年代に全国にカフェが20万軒あったのが今はたったの4万軒!
1日に2軒ずつ店仕舞いしているというから、村の乾物屋兼カフェなどが消えていくのも当然のこと。
ホテルも1996年~2007年の11年間で10%減少し3万軒から2万7千軒に。とくに家族経営の小ホテルだけで約4千軒が廃業している。
フランス人は昼食でもワインをたんまり飲み午後の仕事もままならぬ…という昔からの伝説が通らなくなっているようだ。ここ数年、経済的に市民を圧迫している「購買力の低下」だけでなく、飲食店(-1.5%)やディスコ(-3%)も禁煙になったためそれだけ客足が遠のいているのも確かだ。
それとサラリーマンもブラッスリーなどで昼食に1~2時間費やす時間などなく、ファーストフードで間に合わせるようになっている。この一年間でマクドなどは2.64%伸びており、社員食堂も4.6%増えているというからレストランで食べる人が減っているわけだ。
もうひとつの傾向として、デザートを一皿とって仲間と分け合うとか、例えばパリに数軒あるカフェ・レストラン、インディアナ・カフェの350gのビッグビッグバーガーを親子3人で分けるという客も増えているそう。 こうした傾向が強まるなかで、昔ふうに家で用意したサンドイッチまたはお弁当をもってくる人が、なんと12%もいるそうだ。食生活評論家に言わせると、25年前の食習慣に戻る傾向にあるという。
また何かのお祝いで奮発してレストランでとか、週末の晩、ちょっと気張って友人と高級レストランでという客もかなり減っているようだ。
今日の危機を乗り越えるための唯一の手段として、レストラン・カフェ業界は、一般消費税TVAと同じ税率の飲食税19.6%を食料品のTVA率5.5%(テイクアウトやホテルは5.5%)に引き下げることを要求してきたが、欧州連合の許可が下りないということで延び延びに。サルコジ大統領の奮闘が期待されている。
が、編集室の隣にあるホテルの経営者に聞いたところ、EUが飲食税の引下げを引き延ばしているのではなく、じつを言えば政府が決断を下さないせいだという。なぜなら全国のカフェやレストラン約15万店とホテルの朝夕食も5.5%に下げたら、この業界からの税収入が3分の1になるわけだ。なるほど、政府の言うことと本音にはズレがあることがうなずける。(君)