サルコジ大統領が内務相時代に掲げた青少年の非行対策スローガン〈寛容ゼロ〉で抑圧措置が顕著に。さらにその強化と法文化に努めているのがラシダ・ダチ法相。すでに昨年8月制定のダチ法は、少年(13~18歳)累犯者に対しては責任免減措置を認めず、成人と同等の刑事責任を科している。法相によれば、少年犯罪には窃盗や暴行の他、「強姦、誘拐、麻薬売買、バス放火」なども含まれる。未成年者のうち30人に1人の割合(3.4%)で、年間約20万3千人が軽・重犯で取り調べを受け、約5万7千人が処罰を受けている。そのうち673人(13歳未満115人)が現在拘留、あるいは監護施設に収容されている。
現行法では13歳から拘留できるが12~14歳のほとんどの少年は監護施設に送られる。少年法1945年令の前文にある「刑罰より教育を優先」という原則は、現在ほとんど死文になっていると司法・補導関係者は嘆く。
犯罪の若年化と重犯化が進むなかで、ダチ法相が1945年法改定ヴァリナール委員会に託した改革法案が12月3日に公表された。まず少年裁判所を「未成年者裁判所」と改め、民間補佐2人を廃し判事が1人で審判し、16~18歳の累犯者は普通の軽罪裁判所に送致する。現在、少年には刑事責任は問われず判事の判断に任されているが、刑事責任年齢が13歳から12歳に下げられる(スイス7歳、英国10歳、日本14歳)。
12歳から拘留できることに対し、専門家100人が〈PsychoEnfants〉誌最近号に「拘留することは教育ではない。(…)12歳では自分が犯した行為を判断できない」と抗議の声明文を発表。フィヨン首相も強く反対を表明した。少年裁判所の判事は審判すると同時に、家庭環境の犠牲者でもある少年らを保護する二重の任務を担っているが、小児精神科医や補導員の削減により彼らの保護・補導まで充分に手がまわらなくなっている。法案では、離婚・家庭内暴力など民事係争の板挟みになった未成年者の保護は裁判所から分離し、県の少年保護課にまわされる。
〈Le Nouvel Observateur〉誌(11/27)でペール心理分析医は、「非行少年を裁く前に彼らに考える時間も、成長する時間も与えない。明日はおとなになる主体を完全に無視し、非行という抽象概念のために事件の分析を求められている感じだ」と指摘する。治安第一を掲げるサルコジ大統領の意思を忠実に実行しているダチ法相は、非行少年の逮捕・審判・拘留という即決実行の合理的措置の強化に努めている。
貧困化、親の失業・離婚・別居、家庭崩壊、家庭内暴力といった環境に置かれた少年が非行・犯罪を重ね、12歳から拘置所と監護施設の間を行ったり来たりして過ごすことになる。彼らの未来の色はそれらの建物の壁の色でしかなくなるのではなかろうか。今年拘置所での自殺者105人のうち87人は未成年者なのだ。(君)