ロダン美術館で、17年ぶりにカミーユ・クローデル展が開催されている。
今回は、19世紀後半という時代と、当時の女性彫刻家という面からカミーユの作品を再考するのが主眼だ。会場の解説を読めばテーマと作品の関わりがわかるので、ここではあえて言及しない。
それよりもこの展覧会では、身体の扱い方という視点から、カミーユとロダンの違いがわかる。これだけの数のカミーユ作品を見られる機会はめったにない。カミーユを見たあと、常設展を訪れて、そこにあるロダンと比べてみてほしい。
オヴニー2006年9月1日号で指摘したように、ロダンの人物は、ほとんど上半身をひねっている。左足が前に出たとき、右腕と肩が前に出ている。つまり、骨盤と肩の動きの間にひねりがある。これは、現代人の歩き方だ。しかし、カミーユの人物にはそれがない。明治以前の日本人はこの歩き方していたといわれて、話題になっている、「ナンバ歩き」(同じ側が半身ごとに動く歩き方)の動きだ。『La Vague 波』の女性の一人がその例だ。『L’âge mûr 分別盛り』でも、真ん中の男は右腕と右脚を前に出していて、体がひねられてなく、流れるような動きをしている。例外はカミーユがロダンのアトリエにいた初期の作品で、ロダンばりに、体の落とし方が不自然だ。
女性が背筋をまっすぐに伸ばしていないのもカミーユの特徴だ(『La Vague 波』、『La Causeuses おしゃべりな女たち』)。それに比べ、ロダンの人物は、胸を張って、肩をいからせている。
このため、カミーユの人物の姿勢は、ロダンの作品に見られるような強烈な視覚的効果は薄いかわり、穏やかでほっとさせる印象を与えている。後年、「ロダンの一味が自分のアイデンティティを破壊する」という妄想にとらわれたカミーユは、師と自分の、人間を見る眼の違いを自覚していたはずだ。
ただ、『La Vague』でも『La Causeuses』でも『La petite châtelaine 小さな女城主』でも、女性の首が緊張しているのが気になる。カミーユ自身、パラノイアになる前から、無意識のうちに常に首を緊張させ、頭にうっ血を招いていたのではないか、と思えるのだ。(羽)
ロダン美術館 : 79 rue de Varenne 7e 7月20日迄。月休。
CR: Musée Rodin (photo Baraja) Adagp
●Richard SERRA (1939-)
今年で2度目のモニュメンタ。2008年の招待作家リチャード・セラの巨大な金属のモニュメント。6/15迄(火休)。
グランパレ
●EChO Wanted
8人のアーティストの目を通して見る地球の環境問題。写真、ビデオ、インスタレーション作品。7/12迄。
Galerie Karsten Greve : 5 rue Debelleyme 3e
●葛飾北斎 (1760-1849))
遠近法や合成顔料プルシアンブルーの使用など西洋画技法を取り入れ当時の浮世絵版画を革新し、死後西洋芸術に多大な影響を与えた北斎の回顧展。『富岳三十六景』などの風景画や花鳥画他、数多くの作品を展示。
8/4迄(火休)。
Musée Guimet : 6 place d’Iéna 16e
●Traces du Sacré
生と死とは何か? 人間はなぜ存在するのか? 神の存在を信じ、信仰を通してこの問いを探究してきた人類。18世紀以降の啓蒙主義、資本主義などの台頭で信仰の価値は激変したが、人類の問いかけはなくならない。20世紀のアーティストはどう表現してきたのか?200人のアーティストの作品350点。
8/11迄(火休)。
ポンピドゥ・センター
●L’Image révélées
紙のネガを印画紙に焼き付けてポジ像を得る写真技術カロタイプを1840年英国人タルボットが発明。1840年から1860年の英国の草創期の写真120点。柔らかで深い光と影。9/7迄(月休)。
オルセー美術館
●Le Daguerréotype français
1830年代にフランス人ダゲールが発明したダゲレオタイプの写真70点を展示。銅板写真の鏡のようなマチエールとディテールの繊細さ。9/7迄(月休)。
オルセー美術館