建築界のノーベル賞ともいわれるアメリカの国際的建築賞が〈プリツカー賞〉。2008年度はフランスを代表する建築家ジャン・ヌーヴェル(62)に授与された。その授賞理由は「創造的な実験の試み」だった。
パリのアラブ世界研究所、ケ・ブランリー美術館、カルティエ財団美術館、東京の電通本社ビル、マドリードのソフィア王妃芸術センター、バルセロナのトーレ・アグバール、スイスのルツェルン文化会議センター、ベルリンのギャラリー・ラファイエットなど人目を引きつけるフォルムと独特の存在感を持った建築群…、「地球上のあらゆる都市に、現実とは無関係にデザインされてばらまかれた画一的な建築物と闘わなくてはいけない」と語るヌーヴェルならではだ。他にもニームの団地やナントの裁判所なども名高いが、実際にそこに住んでいる人やそこで仕事をしている人には、暖房費がかかりすぎる、雰囲気が暗すぎる、見学者が雨でも外で待たなくてはいけないなどと、理想主義の反面の不便さも指摘されることが多い。
1945年、ロット・エ・ガロンヌ県のフュメルで生まれる。1966年パリ国立美術学校に入学し、「1968年5月」を間近に体験。1970年にフランソワ・セニュールと共に事務所を設立し建築家として活動を開始。1987年、外光に反応するシャッタースライド方式の窓を使ったアラブ世界研究所の建築で一躍脚光を浴びる。「誇らしげに動くクマのような巨体」といわれる1m83、90キロを軽々動かしながら、ジャン・ヌーヴェルは150人以上のスタッフからなる建築事務所を率いている。(真)