日本の経団連にあたる仏企業運動MEDEFのパリゾ会長は、同団体所属の産業・鉄鋼業連盟UIMMの前会長他、古参連中を相手どりUIMMの闇資金体制と内部癒着を糾弾する。
48歳のローランス・パリゾ会長は統計業界大手フランス世論研究所IFOP(1938年創立)の所長。2005年、MEDEFに新風を吹き込む会長として就任し「国民が企業を愛するようにしたい」をスローガンに企業団体の近代化に努めている。MEDEF(元CNPFは1946年創立)は、重工業から銀行、保険、建設、流通まで多種連盟を擁し、75万企業が加盟。一方、UIMMは1901年、重工業盛んな時代に創立(当時企業の70%が加盟)、現在7%、4万5千企業が加盟。
組織としてはMEDEFが上位にあるが、歴史的社会的にUIMMの方が古く根が深い。MEDEFが社会保障や失業保険など800種以上の労使関連組織に代表権をもち、UIMMは全国商工業連合UNEDICや幹部職員年金など101種の組織を管轄し、労使・政府間交渉にあたる。
昨年9月、2000~07年にドニ・ゴチエ=ソヴァニャックUIMM前会長(UNEDIC会長兼務)が現金1900万ユーロを同連盟の口座から引き出していたことが発覚。1月16日、前会長は背信・隠匿容疑で取り調べに。
12月、UIMMの重臣が彼の退職金150万ユーロと、追徴金や罰金まで同連盟が支払うという内密取引をしていたことを2月末に知ったパリゾ会長の怒りが爆発。しかし3月20日、同連盟の代表者会議の報告によると、前会長への退職金他、辞職予告期間1年分の手当や「強制」定年補償金も入れると、前会長への支払い額は260万ユーロにのぼるという。
3月3日のUIMM緊急会議でパリゾ会長は、労使関連組織の役職から同連盟会員の辞任を要求したが、彼女の独断的攻撃に同連盟の古参らが歯ぎしりするなか、サン=ジュール新会長は前会長の退職金額は見直すが、事業経験豊かな同連盟会員の労使関連組織からの辞任は当分受け入れられないと発表。
ゴチエ=ソヴァニャック氏によれば、彼が引き出した1900万ユーロは労使交渉などの「潤滑油」として使われたという。内務省情報局ベルトラン元局長の著書『何も知らないが…全部話す』は、1974年大統領選ジスカール・デスタン候補も同連盟から金一封を受けていると書いているが、裏金のおこぼれにあずかった政治家や労働組合代表、事業家はかなり多いのでは。前会長は、彼らにばらまいてきた闇資金の収賄者名を明かさずスケープゴートになる覚悟のようだ。(君)