ダンディズム 時空を超えて よみがえる N° 627 2008-03-01 ある晴れた午後、街を歩いていると、突然目の前に19世紀の肖像画から抜け出してきたような黒人男性が現れた。シルクハットに長いマント、そしてネクタイにリボン、ステッキまで持っている。 どうしてそんな格好しているの?「西洋文化の中で、黒人は常に美の概念の外におかれていたが、僕はこの事実に反対。それを服装で示しているだけだ」。これがあなたにとって一番美しい格好というわけ?「そうだよ。19世紀のダンディズム(中産階級出身者が貴族的な生活様式を模倣)。一番好きなスタイルだ」。ところで職業は?「作家だよ。最近はパリ郊外の移民系の若者たちについての研究を出版した。僕も未成年の時は権力に反抗して、刑務所に入ったこともあったよ。だから今後こういった若者がどう生きていくべきか書いた」。見せてくれた本には作者名がMLHとなっているけど、ペンネーム?「そう。本名はBlack Dandy」と真顔で答える。それ以上追求しないことにしよう。そのマント、どこで買ったの?「オデオン界隈にあるクラシックな服を売るお店で」。服装のモデルにしている人は?「フレデリック・ダグラス。アメリカで奴隷として生まれ、作家になった初めての人だ」。周りの反応は?「家族も友だちも僕を誇りに思っている。大学の教授も。そう、僕は数学と哲学を専攻する大学生でもある」。教室にその格好で?「そうだよ。この格好が僕のアイデンティティそのものだから」。26歳のBlack Dandyのマントは、きょうもパリのどこかで翻っているのだろうか。(穂) Share on : Recommandé:おすすめ記事 マスク着用必須サイン/パリ、ボルドー、トロワなど 包んで、結んで、風呂敷ドレス。/ジュイ布美術館 Les Grands Voisins / パリ14区 サパンの捨てかた。 ただいま、ノエルの飾りつけ中! また、スカーフ論争。 Gare du Nord 〜 Place de la Nation