ギャグ満載、ほんのり気分。 “Soyez sympa, rembobinez”


 ミシェル・ゴンドリー監督『Soyez sympa, rembobinez 巻き戻し、お願いします』は、おもちゃ箱をひっくり返したような映画だ。舞台は、マンハッタンから13キロ、ニュージャージーのとある町にある〈Be kind rewind〉(この作品の原題)という店名のビデオ屋さん。ここはDVD の世の中になっても未だVHSをレンタルしているという時代遅れの店。店員のマイクと親友のジェリーが、店主の留守中に、とんでもないことをしでかす。体内に磁気を仕込んでしまったジェリーが知らずに店内のVHSの中身を全部消してしまう。数少ない顧客のニーズに応えるために、なんと二人は、自ら著名なる映画作品の数々のリメイクを始める。『ゴーストバスターズ』、『ドライビング Miss デイジー』…、果ては『2001年宇宙の旅』まで。意外やこのハチャメチャなリメイク・シリーズが地元民の間で大人気になり、店の前には長蛇の列が…。そこに旅先でDVDに切り替えなければ時代に遅れると悟った店主が帰って来るのだが…。
 とにかくギャグの満載で、あまりのバカバカしさに笑い転げていると、なんか次第に、ほんのりした気分に包まれてくる。そもそもゴンドリーという監督自身がずっとずっと少年の夢を持ち続けていて子供みたいなところがある。いつもいつも色んなアイデアが沸いて、それを形にしている。本作は前作『恋愛睡眠のすすめ』以上に、そんなゴンドリー・ワールドが開花している。もちろん映画への愛、消えゆくメディアVHS(お世話になりました!)へのメランコリー、そしていとおしき人たちへのオマージュが底辺に流れているのだが、「みんなで力を合わせて何かを作り上げる喜び」を監督は主張する。下手くそでもいい、アマチュアのままでいい、作り手になろう。(吉)

Julie Depardieu (1973~)

 昨年のヒット作『Un secret』や、今月公開の『Les Femmes de L’ombre』に登場するジュリー・ドパルデューは、ざっくばらんとした言動で、張りつめた空気を自然に和ます緩和剤。そんな時、庶民的な魅力を振りまいた往年の大女優アルレッティの影が透けて見えるのだ。
 パパは俳優のジェラール・ドパルデュー。1994年、父の主演作品『愛の報酬 シャベール大佐の帰還』で端役デビューを果たす。「俳優になりたかったことはないけど、女優の仕事が気に入った。周りが私に何かを期待してくれることが好き。だって私は自分に何も期待していないから」。無欲の勝利でじわじわと活躍の幅を広げた彼女は、2004年、『リリィ』でセザール賞最優秀新人女優賞と助演女優賞をW受賞。『恋は足手まとい』、『ぜんぶ、フィデルのせい』と、出演作はシナリオ重視の傾向アリ。 
 私生活では庭仕事好き。その延長か(?)、髪に花飾りを付けることが多い。「花はウツとの戦いを助ける。今日はひとつしかないから軽いウツ」。彼女の笑顔は、口角が上がったまま固まってしまった道化師の笑みに似て、笑っていても泣いてるみたい。こんな彼女の繊細な不安定さは、パパには絶対にないもの。もしや芸術家としてパパを超える日が近いのではと、ひそかに期待している。(瑞)


●Paris
 スペインやロシアからの長旅を経たセドリック・クラピッシュ監督が、ようやく本拠地に戻りパリの街そのものを主役に据えた新作を撮った。それはあらゆる方向から観察された都市のパッチワーク。心臓の病を持つ青年と社会福祉士の姉を軸に、大学教授、パン屋の女主人、カメルーン移民など登場人物は数限りない。クラピッシュお得意の遍在する視点は、「憧れ」、「クリシェ」、「欺瞞」、「日常」などあらゆる枕詞付きのパリを、肯定も否定もなくすべて呑み込み、流れるように配置する。死や誕生は急に私たちを捉え、物事は意外にうまくいったりいかなかったりするだろう。それでも我らがパリは、また明日を迎えるだけだ。(瑞)