2年前の秋の郊外暴動が再来?

 11月25日夕方5時頃、パリ北方(ロワシー空港西部10km)ヴィリエ・ルベル市の整備対象区域ZACで、15歳と16歳の少年2人がヘルメットを被らずに乗ったミニバイクが、パトカーの左側フロントに激突し2人とも即死。同夜から2日間、数百人の青少年が官憲への「復讐」と、火炎瓶でゴミ箱や車数十台、警察署、図書館に放火、自動車販売店・商店を破壊。警官・機動隊は催涙ガスとフラッシュボールで応酬、警官約130人負傷。警察はパトカーへのバイク激突「死傷事故」とし、目撃者は警官による「殺害」と証言、監察官局の調査結果が待たれる。
 同市は1950年に人口5千人だったのが75年には2万6千人、現在3万人に。60年代以降マグレブ諸国からの移民の急増により、低家賃住宅HLMが急造され全住居の50%を占める。25歳未満が人口の40%、ZACの失業率は30~40%で「社会的ゲットー」といわれる環境が定着。移民のためのベッドタウン造成から35年、その間近くにロワシー空港(7万5千人)やディズニーランドが建設され重要な労働市場をなしているにもかかわらず、RERD線だけでパリにつながるヴィリエ・ルベルは、交通網不足から工場・企業誘致もなく職場なしの金欠郊外都市に(イル・ド・フランス住民の年平均所得12 500€に対し6500€)。スポーツや文化施設に乏しい環境の中で青少年たちは、公道では禁じられているポケバイやミニバイクでの暴走に興じる。
 11月29日、サルコジ大統領はTV特別番組で同事件に触れ、「暴動を起こす郊外のごろつきたちを社会的犠牲者と捉えることは拒否する…社会問題とは何ら関係ない」、彼らを暴行・破壊罪容疑で逮捕すると、大統領として威嚇する。
 2005年10月末から3週間続き、外国でも大きく取り上げられた郊外暴動事件の再来? 2年前は、パリ郊外クリシー・スボアで、2人の少年が警官の追跡を逃れて変電所内に逃げ込み感電死した事故が発端となり、警官の催涙弾が回教寺院前に誤って打ち込まれたため暴動が激化、車や学校、警察所など公共施設への放火・破壊行動が近隣の数郊外にも波及していった。
 以来何も起きていないわけではなく、2006年には全国で集団暴力事件5600件(車4万台炎上)、マルセイユでも5人の少年によるバス内放火事件(女子学生が全身火傷)と暴力が激化。以前の暴動は放火・破壊が中心だったのが、官憲対郊外青少年の一触即発のにらみ合いのなかで、暴動の対象が官憲、議員、取材記者(体制側と見なし、脅迫やカメラ強奪)へと移っている。
 サルコジ大統領が2年前、「ラカイユ : 社会の屑」と呼んだ不良青少年らの呼称が今回「ヴォワイユー : ごろつき」と変わったが、彼らの置かれた環境には改善の兆しも見えないのだ。(君)