Boeuf des mariniers
10区にボクが友人たちと出かけていくお気に入りのワインバーがあり、エシャロット入りクリームソースがたっぷりかかったアンドゥイエットが素晴らしい。そして本日の一品としてよく登場する〈mariniers〉風牛肉の煮込み。タマネギがたっぷり入っていて、ごはんが添えてあるせいもあり、牛丼を食べているような親しみやすい味だ。mariniersというのは、ペニッシュのような川船の船乗りたちのことで、どこか海の匂いのする肉料理をと、彼らが考案した一品だという。
牛肉はスネ上部の肉giteや肩ロースpaleronを、塊で1.5キロ買ってくる。すごい量と思われるかもしれないが、これで6人から8人分。これくらい作らないとうまくできないので、友人を招いたりした時にトライしてみてください。残ったら煮直すだけ。さらにうまくなる。これを1.5センチほどの厚さに切り分ける。タマネギは二つに割ってから薄切りにする。ニンジンは輪切り。
ココットのような厚鍋にオリーブ油を大さじ2杯とり、まずタマネギを1/3敷く。この上に肉を半量、重ならないように並べ、その上にタマネギを1/3、ニンジンを半量のせ、残りの肉を並べ、さらにその上に残りのタマネギとニンジンをのせ、控えめに塩、そしてコショウたっぷり。白ワインを注ぎ、ヒタヒタになるようにさらに水を加えて、ブーケガルニを置き、火にかける。沸騰したら弱火に落とし、フタをして3時間は煮込んでいく。圧力鍋があると調理時間は半減です。
煮上がる15分前になったら、卵の黄身、アンチョビーペースト、残りのオリーブ油をマヨネーズ状に練り合わせたものを混ぜ入れる。最後に塩、コショウで味を調え、刻んだパセリをたっぷり散らしましょう。付け合わせはやっぱりごはんが一番です。
ワインは、ブルゴーニュ・アリゴテのような柔らかな白でもいいし、ロワール産のガメーのような軽い赤も合う。(真)
煮込み用の牛肉1.5キロ、タマネギ7、8個、ニンジン3本、オリーブ油大さじ6杯、マスタード大さじ1杯、卵の黄身1個分、アンチョビーペースト大さじ3杯、白ワイン500cc、ブーケガルニ、パセリ、塩、コショウ
●コリウールのアンチョビー
スペイン国境から26km、地中海に面した小さな町コリウールは、ピカソやマチスなどの画家が滞在した町として知られている。カタロニア地方に属しているこの町の名産品はアンチョビーanchois(ヒシコ、カタクチイワシの類)。アンチョビーはイワシより細長く、下あごの上方に鼻面が突き出している小魚。新鮮な時は背が緑に近い美しい色だ。コリウールのアンチョビーは、塩漬け、頭やハラワタを取ったりおろしたりする作業すべてが手仕事という高級品。塩漬け、ビネガー漬け、オリーブ油漬けなどになって売られている。
●anchoyade
アンチョビーペーストは、スーパーなどで瓶詰めやチューブ入りになって販売されているが、これを使って、南仏風アンチョビーソースを作ってみよう。アンチョビーペーストを小さなボウルにとり、きめ細かくつぶしたニンニク適量を混ぜ入れ、オリーブ油で伸ばしていくだけだ。最後にレモンの搾り汁を加えて味をしめる。生のニンジンやセロリ、南仏のvioletと呼ばれる小さなアルティショー、カリフラワー、さっとゆでたサヤインゲンなどを大皿に盛り付け、このアンショワヤードを添えれば、もう南仏気分だ。ボクは、このアンショワヤードを、缶詰のツナをほぐしたものに混ぜ入れ、トーストした田舎パンにのせ、おつまみにする。
●アンチョビー入りパスタ
4人分としてトマト1個は湯むきし、種の部分をのぞいてせん切りにする。タマネギ1個、フヌイユ少々もせん切り、ニンニク2片はみじん切り。油漬けのアンチョビー8尾は細く切っておく。フライパンにオリーブ油を大さじ4杯とり、タマネギ、フヌイユ、ニンニクを炒め、タマネギに軽く色がついてきたら、トマトとアンチョビーを加える。しばらく炒め、ほどよくゆで上げたパスタ4人分を加えて、混ぜ合わせればでき上がり。パセリを散らし、おろしたパルメザンチーズを添える。
●Tout Robuchon
最近はマーケティング先走りの料理本が増え、表紙の写真もレイアウトも似たりよったり、と苛立っている時に見つけたロビュションの一冊。768頁中に写真ゼロなのがまずスゴイ。美しい写真にしり込みしたり、ちょっとでき上がりが違うなあ、などと失望せずに、一品、一品を覚えていくことができる。調理法、道具、料理用語に始まり、ソース、スープ、前菜、サラダ、卵料理、魚介料理、臓物料理、肉料理…デザートに至るまで、簡潔でわかりやすいレシピが続いていく。各家庭に一冊は置いておきたい料理本です。(真)