映画によく出てくるあの懐かしい路面電車がパリから姿を消したのは1937年のこと。そして60年代以降、車の渋滞地獄がパリの代名詞になってきた。ドラノエ市長念願の町づくりは車の量を減らすこと。現在町中で車道を狭くし歩道を拡張、バス・自転車専用道の工事が続いているのは、市長と緑の党市議員が一丸となり道路の荒療治に踏み切ったから。昨年12月16日、パリ南西部の環状道路に開通したトラムウェイT3もその一環。 すでに運行のサンドニ県のトラムウェイT1、オ・ド・セーヌ県のトラムウェイT2に次ぎイル・ド・フランスで3番目。3年間の工事中、騒音と埃を浴びた住民の苦情はもはや過去のこと、今では線路沿いの地価が急上昇中だとか。地方ではリヨン、ボルドー、ナンシー、グルノーブル、モンペリエ…とすでに15都市でトラムウェイが走っている。 パリでは、環状道路 Bd des Maréchaux(ナポレオンが区分ごとに元帥 maréchalの名をつけた)の南西、15区ガリグリアノ橋から13区のPorte d’Ivryまで7.9キロを運行。5年後には18区のPorte de Chapelleまで延び、環状道路の2/3を走るようになる計画だそう。 芝生で覆った道路中央部分を走る全長45メートルの超モダンなトラムウェイは音も立てずに快走。ガラス張り部分が多く存分に景色を楽しめ、内部はパステル調でゆったりしたシート、車椅子でもらくらく乗車できるようになっている。15駅区間をラッシュ時は4~5分、他の時間帯は5~8分おき。操縦席はTGV並みのハイテク装備で、乗車券は地下鉄と同じで各駅の自動販売機で買える。車両入口中央部にパンチ機が設置されている。 今まで郊外方面からRERや地下鉄を乗り継いでいた通勤者にとっては通勤時間が半減するのは確かで、1日平均10万人の利用者が見込まれている。が、トラムウェイの導入で注意すべき点は、モーターバイクや自動車の信号無視によるトラムウェイとの衝突事故、あるいはトラムウェイまたは自動車が踏切で立ち往生してしまう場合だ。踏切周辺の数カ所にカメラが設置してあり、トラムウェイの運転手は事前に状況をキャッチし、速度を落とせるようになっているが…。 これからはフランス人が、自動車が来ようが来まいが信号の前でじっと待っている日本人を見習えば事故も減り、同じ地表にトラムウェイ、自動車、バイク、自転車、車椅子、歩行者が共存できる安全でエコロジーの街がパリに生まれるのも夢ではなさそうだ。(君) |
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