今年の冬、一番おすすめの展覧会。会場に泊り込みたいと思うほど、何度行っても素晴らしい。 北エジプト、アレキサンドリアのアブキール湾で、エジプト・フランスの共同調査隊が1996年から始めた本格的な発掘調査の結果、海底に沈んだ伝説の都市「ヘラクレイオン」の一部が現れた。 ヘラクレイオンの存在は、ギリシャの歴史家ヘロドトスが記述しているが、どこに存在したかが正確にはわからなかった。引き上げられた遺跡から場所が突き止められ、またエジプト語でトニスと呼ばれていた都市と同一であることもわかった。ヘラクレイオンの西にあった、プトレマイオス朝の宗教の中心地「カノポス」の遺跡も、海中から出てきた。 展示品は、紀元前700年から紀元800年頃までのものだ。会場の要をなすプトレマイオス朝は、紀元前332年にエジプトを征服したアレクサンドロス大王の死後、部下の一人が建てたギリシャ人の王朝である。紀元前30年のクレオパトラの自殺後、エジプトはローマの属州になり、その後、東ローマ帝国に支配され、7世紀にイスラム軍に征服された。都市が海底に沈んだのはこの後だ。 発掘品には、エジプト文明の様式にギリシャ、ローマの要素が加わっている。エジプトの神々の機能や性格がギリシャの神々に付加されてフュージョンするさまが、彫刻を見れば一目瞭然。エジプトの神がどのギリシャの神と一体化したかの説明もあり、教育的配慮もきちんとなされている。 会場は暗く、大きな海中写真が壁面を一杯に覆っている。自分が海底の引き上げ現場に居合わせているような錯覚に陥る。ビデオには、海底に千年以上眠っていたスフィンクスの頭や神々の彫像のまわりを、美しい魚が泳いでいる様子が映し出される。そこに、静かな音楽が流れ、夢幻的な心地にさせられる。潜水夫が海中で遺跡のサイズを測る場面、海から彫像が引き上げる様子、船上での処理も興味深い。 説明を全部読んでいたら1回の見学では終わらない。3回行って、計5時間かかった。館内は寒く、トイレは出口にしかない。長時間覚悟で、コートを預けずトイレを済ませてから見よう。(羽) |
CR: Franck Goddio / Hilti Foundation グランパレ : 3月16日迄(無休。9h-20h、水金土日22h迄。10€/8€/大人2+子供2=30€、10歳以下無料) |
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G A L E R I E | ||
Galerie Vu’ 写真と報道の代理店「アジャンス・ヴュ」の地下にある、広さ500m2の、パリ最大の写真専門ギャラリーだ。ジルー・ル・グリュイエクさんとクリスチャン・カジュルさんが共同で運営している。カジュルさんは、リベラシオン紙の副編集長兼写真責任者だった1986年に、アジャンス・ヴュを創立した人。グリュイエクさんは、その前は文学やデザインなどの芸術活動をしていた。 ギャラリーは、自分のスタイルを持ち、新しい視野で世界に疑問を投げかけるような現代作家を売り出すことを目的として、1998年に開かれた。アジャンスの専属写真家のほか、ギャラリーが独自に発掘した作家の展覧会を開催している。 展覧会は、毎回刺激的だ。3月3日まで、モロッコ人作家、ヒシャム・イブンフードの個展をやっている。後ろで机に向かう生徒たちと、前方で非日常的なポーズをする生徒の「教室」シリーズは、絞首刑のシーンを連想させる。全体を紐やキャンデーで覆った作家自身の顔は、拷問を受けた人のようだ。普通の人をモデルにした、極めて政治的な作品だ。(羽) |
2 rue Jules Cousin 4e M。 Bastille |
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