1月1日、ルーマニア(人口2700万人)とブルガリア(800万人)がEUに加盟、2004年10カ国加盟後EUがさらに拡大。どこまでEUは広がるのかという不安が高まる中、仏の拡大賛成派は34%、独30%、英36%で拡大への懐疑派が増える傾向に。非キリスト教国トルコとの加盟交渉も12月中旬に中断された。
主にカトリック国とプロテスタント国からなるEUの中でルーマニア、ブルガリアとも東方正教会国であり、スラブ系の多い東欧の中でラテン系だ。ルーマニアというと、チャウシェスク体制やドラキュラの生まれた国というイメージが浮かび、ブルガリアには、1989年まで旧ソ一辺倒の一党独裁を貫いた非自由主義国の影が付きまとう。しかし作家シオランやイヨネスコはルーマニア出身、歌手シルヴィー・ヴァルタンはブルガリア出身で、文化的にもフランスは両国に負うものが多い。
が、両国の平均所得はEU先進国の1/6~1/5でEUは欧州の「貧乏国」を抱え込んだといえる。EU予算は、高速道路など下部構造の整備・建設にルーマニアに320億ユーロ、ブルガリアに120億ユーロの援助金を投入。また英仏独大企業が自動車・繊維工場他を設立し、この数年高度成長率7-8%を記録。
2002年以降、両国民はビザなしで一定期間EU圏に滞在でき、ルーマニア人250万人、ブルガリア人100万人がEU諸国に移民。最近パリ北郊外の空き地でバラック生活を送るルーマニア人家族も増えている。
Nouvel Observateur誌(1/3-10)の取材記事によれば、ルーマニアの下部構造の建設だけでも労働者40万人は必要なのだが、多くの労働者がスペインのブドウ摘みなど季節労働者としても移民しており、国内の労働力不足が深刻化。同国のある繊維工場の工員の大半は中国人女性で占められ、農業従事者の多くはモルドバ出身だという。彼らは自国の2、3倍の賃金を求めてルーマニアに、ルーマニア人は5、6倍の賃金を求めて先進加盟国に移民する。
最近ポーランドやチェコなどに整形手術や歯の治療に行く英仏独人が増えているそう。観光旅行の滞在中に自国の1/2か1/3の治療費で手術を受けられる新加盟国への医療観光旅行はすでに始まっている。これらの国やEU外からの移民の流入とは逆方向の、先進国消費者の低物価諸国への流出といえよう。
1月1日、スロベニアがユーロを導入した。数年後にユーロ国になる新加盟国が恐れているのはインフレだ。東欧の地中海、黒海に面するルーマニア、ブルガリア東部に別荘を持つイタリア人も急増、投機熱が地価の暴騰(10~20倍)に拍車をかけているよう。(君)