映画が、隠された大戦史を白日に晒すとき。

 今年カンヌでラシード・ブシャレブ監督作品『Indigènes』の主演俳優5人が男優賞に輝いた。監督も含め彼らはフランス生まれのマグレブ系移民2世。なかでも主演/共同製作者ジャメル・ドゥブーズ(31)はパリ郊外で生まれ、郊外の若者らとともに祖父や親たちの過去を共有する世代だ。
 1940年休戦時に140万人の仏兵が捕虜としてドイツに抑留。42年英米連合軍の北アフリカ上陸後、ドゴール将軍下のナチス軍への反撃に不可欠だったのがマグレブ仏領地やアフリカ植民地からの志願兵や強制徴兵だった。アルジェリア人13万人、モロッコ人7万人、チュニジア人2万6000人、アフリカ人9万人…と約34万人が彼らの母国をナチスから救うために、ある者は糊口をしのぐために仏解放軍に加わる。彼らはイタリア、コルシカ、プロヴァンス、アルザスにまでナチス軍に反撃していった。が、植民地出身兵の約6万人が戦死し、顧みられることなく戦地の軍人墓地で眠っている。
 「肉弾」として前線に送られた彼らは上官から植民地出身者としての差別を突きつけられながら〈自由・平等・博愛〉の母国の地を初めて踏む。彼らのなかにはナチスから母国を救う使命感と同時に、植民地体制からの解放、民族主義に目覚める者もいた。アルジェリア民族解放戦線の指導者となり、1962年独立後初代大統領になったベン・ベラもその一人だった。
 現在生存している植民地出身の退役軍人は23カ国にわたり約8万人、半数はアルジェリア人とモロッコ人。彼らへの退役軍人恩給は各国の物価水準に合わせ仏退役軍人恩給額の10~30%。そして仏植民地の独立後、1959年時の恩給額が凍結され今日に至っている。
 フランスと深い歴史的関係をもつアルジェリアとフランスとの間に未だに友好条約が結ばれていない背景には、60年来の怨念が潜在しているのでは。ベン・ベラ内閣で閣僚を務めたブーテフリカ現アルジェリア大統領は、植民地出身兵の大量戦死をもうひとつの「ジェノサイド」とまで言い切っている。ちなみに第一次大戦ヴェルダンの戦いでは、植民地出身兵93万人のうち7万人が戦死している。
 彼らと遺族が受けた深い傷を、戦後どの仏大統領が思いやっただろうか。『Indigènes』の試写会にシラク大統領夫妻も参席、感動したベルナデット大統領夫人の一声「ジャック、どうにかしてちょうだい」が耳にこびりついたのか、大統領は彼らの恩給を仏退役軍人並みに引き上げる意向を言明。が、60年後「国内のアンディジェーヌ」と自嘲する移民3世らが昨年引き起こした暴動の根は、祖父らの遺恨に繋がってはいないだろうか。(君)

 

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