最近問題になっているのは、西アフリカからスペイン領カナリア諸島に、命がけで小舟でたどり着くアフリカ人ボートピープルだ。 漁業が底をついているモーリタニアやセネガルの漁師や職のない青年たちだけでなく、ナイジェリアやマリ、ブルキナファソなど内陸から砂漠を歩き続け大西洋岸にたどり着き、数十人がぎゅう詰めの小舟で数日かけてカナリア諸島に。1月以来約2万2000人、8月だけで4千人余が漂着し、約590人が溺死、15%は脱水症状で死亡している。 この夏、サルコジ内相の通達に従い滞在許可を申請した、 就学児をもつ不法移民家族は約3万人。そのうちの6924人を県知事が認可したばかり。ドイツは、5~10年来不法滞在しているがドイツ社会に同化しているイラク、アフガン、ユーゴからの亡命者15~20万人の滞在を認可する意向。が、不法移民は150万人にのぼる。ドイツは、出産率の低下と人口の老齢化から移民対応策を模索しているよう。 イタリアはユーゴ崩壊後、バルカン地域からの移民・難民の流入が続いたが、03年に69万人、06年はすでに52万人の滞在を許可し、国籍取得に必要な在住年数も10年から5年に短縮している。スペインでは、90年代までモロッコからジブラルタル海峡を渡ってくる密入国者が絶えなかったが、2000年以降、経済成長を機にザパテロ政権は昨年だけで60万人に滞在許可を与えた。スペイン政府の寛大さが、アフリカ人ボートピープルのカナリア諸島漂着を増大させているのでは。 しかし9月11日、スペイン社会党は、これ以上移民を吸収するのは不可能、不法移民80万人を含め今後の密入国者は祖国に送還すべきと政府に警告。スペイン、イタリア政府の寛容姿勢に憤慨するサルコジ内相は、「他のEU諸国にお伺いも立てずに大量移民を受け入れ、いまになってEU委員会に助けを求めるなんてあとの祭り」とチクリ。 フランスには「移民を選択する」権利があると息巻いていたサルコジ内相だが、7月にモロッコで開かれた欧州・アフリカ圏内相会議で多くのアフリカ諸国が、受入れ国による移民選択構想を批判。でなくても東欧やアジア、アフリカなどからの看護婦や医師、コンピューター技師などが欧米で基準以下の給与で歓迎されているように、発展途上国からのエリート層の流出が目立っているのである。 60年代以降、旧植民地国への経済援助がネオコロニアリズムに陥らず真の再建に尽くしていたなら、これらの新エリートたちが国造りの柱となり、年々深まる南北の溝を埋める役割を果たしていたはずなのに…。(君) |
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