Rouget barbet au fenouil roti
ちょっと小さなヒゴイという色と形のヒメジrouget barbet。その締まった白身は繊細な風味を持っていて、大西洋でもとれる魚だが、とりわけ地中海沿岸の国々で愛されている。網焼きにしたり、唐揚げにしたり、香草と一緒にアルミホイルで包んでからオーブンで焼いたり、好みの調理法で味わいたい。活きのいいヒメジはちょっと苦いハラワタも絶品だ! 今回は腹に詰め物をするので、残念だけれど、うろこをとってからハラワタを出した方がいいだろう。よく切れる包丁で二カ所、斜に切れ目を入れておく。
アニス風味がさわやかなウイキョウは、このヒメジの付け合わせに最適だ。茎と葉を切り落としてから四つ割りにし、芯をのぞく。オリーブ油をはけでたっぷりと塗り、塩、そして黒コショウもたっぷりと挽きかけ、オーブンプレートに重ならないように並べ、200~220度に合わせて熱くなっているオーブンに入れる。20分ちょっとで柔らかくなって、縁に少々焼き色がついてきたらでき上がりだ。
ウイキョウをローストしている間に魚をソテーすることにしよう。切り落としておいたウイキョウの茎と葉をみじんに切って、大さじ1杯ずつ魚の腹に詰める。魚の両面に塩、コショウをし、皮がはがれずきれいに焼き上がるように、小麦粉をできるだけ薄くはたいておく。フライパンにオリーブ油を多めにとり、中火にかけ、両面にきれいな焼き色がつくようにヒメジをソテーする。焼きすぎると身がパサパサになるので注意しよう。
熱くしておいた皿にヒメジをとり、余っているウイキョウの茎と葉のみじん切りを散らし、ウイキョウのローストとレモンを脇に添える。ほかに、ルッコラのサラダとか、ラタトゥイユを添えたりできたら、彩りも一段とよくなる。
ワインは、南仏カシスの白とか、タヴェルのようなロゼはどうだろう。(真)
ヒメジ 中くらいのものを4尾、ウイキョウ2、3個、オリーブ油、レモン、塩、コショウ
●ウイキョウ豆辞典
ウイキョウ fenouilの、bulbe、pommeあるいはtêteと呼ばれる茎もとの塊は、古代から、エジプト人、中国人、ギリシャ人が好んで食用にし、またその種を乾燥させたものも、スパイスとして貴重なものだった。ローマ時代から栽培されるようになり、現在は南仏、イタリア、スペインなどが主な産地になっている。地中海沿岸の料理(特にイタリア料理)からウイキョウが姿を消したら、ずいぶんさびしくなるだろう。
bulbeが真っ白でしみがなく、よく締まっているものを選びたい。冷蔵庫の野菜ボックスで数日保存できるが、日がたつと筋っぽくなってしまう。
生のままを薄く切ってミックスサラダに加えると、味にみごとなアクセントがつき、その歯ごたえが気持ちいい。紫タマネギやオレンジとのサラダもうまいし、薄く切ってから網焼きにしたものを、オリーブ油、ニンニク、アンチョビーをミックスして熱くした〈バニャカウダ〉ソースにつけながら食べたりしたらすっかりイタリア気分です。
四つ割りなどにしてからあらかじめ固めに塩ゆでしたものをグラタンにするのもうまい。子牛肉などのおいしい肉汁でゆっくりと煮込んだブレゼもおすすめ。
●sauce bagna cauda
厚めの小鍋に極上のオリーブ油をカップ1杯加え、弱火にかけて熱くする。ここへおろしたニンニク3片、包丁でペースト状になるまで丁寧にたたいたアンチョビーを10尾ちょっと加え、もう数分火を通したらでき上がり。ふつうはこれを小さなフォンデュ鍋に移し、弱火にかけて冷めないようにしながら、好みの野菜(ラディッシュ、レタスの芯、セロリ、ニンジン、赤ピーマン、アーティチョーク、ミニトマト、ウイキョウ…)、ゆで卵などをフォークに刺してディップしながら味わっていく。このソース、別に熱々でなくてもおいしいので、ボクは、熱に強いボールにとって食卓に出すだけだ。
●カブの甘酢漬け
先日、友人のパーティーに新カブの甘酢漬けを持参したらずいぶん好評だった。新カブは、小さめで、付いている葉がまだみずみずしく、白や薄い紫が鮮やかで、しみのないものを選びたい。皮をむくけれど、紫色のところは少し残しておくと、仕上がりの色がきれいだ。これを3ミリほどの厚さに切り塩を振りかけ、軽くもんでから30分ほど置いておく。手でしぼって余分な水気を切り、好みの甘さに作った酢に漬け、軽く重しをかけて3時間くらいでできあがり。ボクは酢の中に細く切った昆布と小口切りにした唐辛子1本を入れておく。(真)