辛辣たる現実。

●Le Rapport de la CIA : comment sera le monde en 2020?/ Nos vaches sacrees
 今回紹介する二冊は、フランスでここしばらく話題になっているものだ。二つとも現在の、そしてこれからの世の中についての分析を提案している。
 一つめは世界について。グローバリゼーション、テロリズム、環境問題、中国やインドの発展など、まさに現在の世界、世界のこれからが多角的に分析されている。これはCIAの資料を訳したもので、もともとはアメリカ政府が今後の世界の動向を見極めて政策を打ち立てるためにあるものだ。つまり、一国の方針さえ左右しうるものともいえる。四つの異なるシナリオ(アメリカの台頭、イスラムの台頭、リベラリズムの台頭、一種の世界的精神不安定)が提示されている。いずれも現在の世界の延長線上にありうる世界だが、こうした近未来観から明らかにされるのは、実は今の世界の変容の複雑さと速さだ。
 もう一冊はフランスに関するもので、こちらは熟年ジャーナリストが書いた「フランスの精神分析」。精神分析とはいえ、この書もフランスの現実、つまりここ20年近くつづいている「鬱」なフランス、「ひっきー」なフランスが、分析されている。なぜ、現在のフランスがここまで落ちぶれてしまったのか、フランス革命からドゴール、ミッテランまでの歴史、そしてヨーロッパ各国との比較をはじめ、近年のフランス政治の裏側をみせつつ、厳しいながらも明確に示される。
 この二冊、いずれも読み終わると現実に直面させられる。一人ではどうしようもない現実に。読み終えて憂鬱になってしまう人もいるかもしれない。が、今の世の中、現実をしっかりみることから始めなければいけないのでは、そう思わせる2冊だ。フランス大統領選まであと1年、これからのフランス、世界を見極めたい方へ。(樫)

Ghislaine Ottenheimer,
Albin Michel, 2006,
292p 19 euros

 
Alexandre Adler,
Robert Laffont, 2005,
270p., 17 euros