2007年大統領選候補への地ならしを急ぐドヴィルパン首相が3月8日、強行採決で国民議会で成立させた〈初採用契約 CPE : Contrat premiere embauche〉。CPEは20人以上の企業を対象に、26歳未満の新社員を2年の試用期間中、理由を明示せずに解雇できる契約。労働基準法を無視し、若年労働者の将来をさらに不安定にするCPEに高校生や大学生が怒り、ソルボンヌを始め全国の大学80余のうち半数以上を学生が占拠、ストにまで発展。2月7日以来、CPE撤回を要求する学生、労働組合員の大規模な全国デモ、3月28日の交通機関にまで及ぶ準ゼネストで背水の陣の首相、若年労働市場打開のための自慢の切り札を手放すか。3月14日には社会党議員が憲法評議会に、CPEの労働基準法違反と、年齢的差別・不平等性などを問う審議を付託しており、その議決待ち。CPEが違憲となれば、首相は高校生や大学生に顔に泥を塗られずに天の裁きと、CPEを諦めるのでは。 CPEのほかに昨年8月、バカンス中に行政命令で布かれたのが〈新採用契約CNE: Contrat nouvelle embauche〉。〈初〉と〈新〉の違いだけで、後者は社員20人未満の小企業が、新採用者の年齢に関係なく2年の試用期間中、理由を明示せずに雇用契約を破棄できる。すでにCNEで採用1カ月後に解雇された51歳の男性が労働裁判所に訴え、元雇用者に約1万7千ユーロの賠償金を支払わせている。労働裁はCNEの尻拭いてんてこ舞い ? 今日、バカロレア合格率は80%前後で大学進学者の量産化が続くなか、大卒後2年以内に定職につけない高学歴者は20~33%と、ディプロム神話が崩れつつある。彼らの多くは研修という形で無給に近い待遇に甘んじるか、6カ月の〈臨時雇用契約CDD : Contrat durée déterminée〉を繰り返すのが現実だ。 高学歴者が増える一方で、75年代以降、重・軽工業人口は600万から05年までに400万弱に激減。30年前は中卒で工場に雇われたのが、合理化によるリストラとグローバリゼーションに拍車がかかり、残るのはサービス業だけ(現在1700万人)。女性労働者の急増も無視できない。80年代に960万だったのが05年には1230万と、男性労働者(1400万)と互角に労働市場に食い込んでいる。どんづまりの労働市場の活性化のために、ドヴィルパン首相が政治的先手を打ったのがCNEでありCPEなのだろう。 だが07年選挙で社会党候補が大統領に当選し政権交代ともなれば、真っ先にCPEもCNEも廃止されるだろうから、政権ごとの短命の法律とみておいた方がよさそう。(君) |
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