国辱だ珍品だと日本ではかなりケナされている『SAYURI』(邦題)が気になって、正月に有楽町の映画館へ出かけた。アーサー・ゴールデンのベストセラー小説『Memoirs of a Geisha』の映画化権を1998年にスピルバーグが取得してから話題を振りまいて来た映画が、どんな出来か観たくもあった。物語は、貧しい漁村から花街に売られて来た少女が一人前の芸者になるまでの成長記。同時に一番を競う女たちの熾烈な争いが描かれ、背景として第二次世界大戦をはさんで変貌する日本の社会、そしてヒロイン、Sayuriの心に秘めた初恋の波乱に満ちた顛末と成就を追った、ある種の純愛物語でもある。 監督は二転三転して『シカゴ』のロン・マーシャル。当初は自ら監督するということで動いていたスピルバーグはプロデューサーとして名を留めている。 これが日本映画だったら、確かに国辱ものだろう。中国人経営の日本レストランで和食を食べるような違和感を日本人なら持つ。出された料理は、まずくなくても和食としては珍品だ。これは何でも自己流に片づけてしまうハリウッド映画なんだからと寛容な気持ちで接すれば良いのだろうが、歴史劇『ラスト・サムライ』と違って、伝統文化の継承が軸にある作品だけに、着物の着方、立ち居振舞の一つ一つが気になり出したら白けて当然。 Sayuriを演じるのは、中国が生んだ当代一の国際スター、チャン・ツィイ。彼女の資質を見抜いて嫉妬しイジメ抜くHatsumomo役には、今や大女優として国際的に揺るぎなき地位に立ったコン・リー(彼女の演技は素晴らしい!)。つまり、日本の女優陣は、彼女たちに負けたのだ。この映画がこうなってしまった遠因は、タレントでしかない日本女優のレベルと国際的になれない日本なのかも…。(吉) |
*『Memoires d’une Geisha(仏題)』のフランス公開予定は3月1日。 |
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